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証憑とは|証憑書類の種類と保存期間

証憑(しょうひょう)は取引の事実を裏づける書類の総称ですが、実は法令に出てこない言葉です。法人税法施行規則が列挙している書類、7年と10年という2つの保存期間とそれぞれの起算点、電子で受け取った証憑を紙で保存できない理由、届出が要らない猶予措置、2027年から効く重加算税の加重までを一次資料で確認します。

証憑とは|証憑書類の種類と保存期間

経理の会話では当たり前のように出てくるのに、辞書的な説明を読んでもいまひとつ腹に落ちない言葉があります。証憑です。

読み方はしょうひょう。「証ひょう」と交ぜ書きされることもあります。

意味は「取引の事実を裏づける書類」で、ここまではどの解説にも書いてあります。ただ、実務で迷うのはその先です。どこまでが証憑なのか。何年持つのか。メールで届いたPDFを印刷して綴じてよいのか。

結論から書きます。証憑は法令用語ではありません。法人税法施行規則を全文検索しても「証憑」という語は1度も出てきません。法令は具体的な書類名を列挙しているだけで、それらをまとめて呼ぶ業界用語が証憑です。

この記事では、法令が実際に何と書いているかを確認したうえで、7年と10年という2つの保存期間、電子で受け取った証憑の扱い、そして2027年から効きはじめる加算税の話までを整理します。

この記事の要点

  • 証憑は法令用語ではない。法人税法施行規則は「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」と列挙している
  • 保存期間の時計は2つある。税法は7年、会社法は10年で、起算点も別。実務は長いほうに合わせる
  • 税法の起算日は受領日ではなく、その事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日。受領日から数えると8年を超える
  • 電子で受け取った証憑は、紙に出力して保存する方法では要件を満たさない。これは希望者向けの制度ではなく、法人・個人事業者が対応を求められる制度
  • ただし猶予措置があり、事前の届出は不要。人手不足や資金不足も「相当の理由」として認められる
  • 電子取引データに関する隠蔽・仮装行為は、重加算税が10%加重される。紙より改ざんの痕跡が残りにくいためで、電子化すると下がるリスクと上がるリスクが両方ある

証憑とは何か

証憑は、取引が実際にあったことを裏づける書類の総称です。

帳簿と対になる概念だと考えると位置づけがはっきりします。帳簿は自社が作る記録で、証憑はその記録が事実であることを外から支える材料です。「400万円の仕入を計上した」という帳簿の記録に対し、注文書・納品書・請求書・領収書が揃っていて初めて、その記録は検証できる状態になります。

逆に言えば、証憑のない帳簿は、書いた人を信じるしかない記録です。内部統制の文脈で証憑が重視されるのは、ここに理由があります。

法令は「証憑」の代わりに何と書いているか

法人税法施行規則第59条第1項は、青色申告法人が保存すべき帳簿書類を3号に分けて挙げています。証憑に当たるのは第3号です。

取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

ここから読み取れることが3つあります。

第一に、相手から受け取ったものだけではありません。自社が作成した書類も、写しがあるならその写しを保存します。発行した請求書の控えを捨ててよいわけではない、ということです。

第二に、列挙は閉じていません。「その他これらに準ずる書類」とあるため、名前が一致しなくても取引の事実を裏づける書類は対象になり得ます。検収書、支払通知書、入出庫の記録などがここに入ります。

第三に、契約書が含まれています。証憑というと領収書や請求書を思い浮かべがちですが、条文は契約書を同じ号に並べています。

なお、第1号は帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)、第2号は棚卸表・貸借対照表・損益計算書などの決算書類です。証憑はこの3号目であって、帳簿でも決算書類でもありません。

証憑の種類を、取引の流れで並べる

証憑を「請求書・領収書・契約書」と羅列で覚えると、抜けが出ます。取引の流れに沿って並べると、どの書類が何を証明しているかが見えます。

段階書類何を証明するか
引き合い見積書金額と条件を提示した事実
発注注文書・注文請書発注した事実と、相手が受けた事実
契約契約書・覚書取引条件の合意
納品納品書・送り状相手が引き渡した事実
検収検収書自社が内容を確認して受け入れた事実
請求請求書支払を求められた事実と金額
支払領収書・振込控え・明細支払った事実

この並びで見ると、検収書が抜けやすいことに気づきます。納品書と請求書は相手から届くので自然に集まりますが、検収書は自社が作る書類なので、作らなければ存在しません。支払期日の数え方にも関わる書類なので、検収とは|検収書と支払期日の数え方も参照してください。

また、証明する事実が重なっていない点も重要です。納品書は「相手が渡した」ことを示しますが、「自社が納得して受け取った」ことは示しません。片方だけでは、架空発注や水増しを検知できない場面が出てきます。

保存期間の時計は2つある

ここが、多くの解説で曖昧になる部分です。「証憑は7年」と覚えていると足りません。

税法の7年と、その起算日

法人税法施行規則第59条第1項は、こう書いています。

青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(中略)に保存しなければならない。

問題は起算日です。同条第2項が定義しています。

前項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月(中略)を経過した日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日をいう。

受領した日から7年ではありません。具体的に数えてみます。

3月決算の会社が、2026年4月10日に領収書を受け取ったとします。

  1. この領収書が属する事業年度は2026年4月1日から2027年3月31日
  2. 事業年度終了の日の翌日は2027年4月1日
  3. そこから2か月を経過した日、すなわち2027年6月1日が起算日
  4. 起算日から7年なので、2034年5月31日まで保存

受領日の2026年4月10日から数えると、8年を超えます。期首に受け取った証憑ほど長く持つことになる、という性質があります。

なお、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合などは10年です(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)。

会社法の10年

一方、会社法第432条第2項はこう定めています。

株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

条文に「証憑」という語はありませんが、取引の裏づけとなる書類は「その事業に関する重要な資料」に当たると解するのが一般的です。そう解する限り、株式会社は10年持つことになります。

税法と会社法では、年数も起算点も違います。税法は事業年度終了の2か月後から、会社法は会計帳簿の閉鎖の時から数えます。

実務の結論

長いほうに合わせて10年で揃えるのが安全です。

7年で廃棄する運用にすると、税法は満たせても会社法側が満たせません。書類ごとに時計を使い分ける運用は、現場で必ず間違いが起きます。保存期間の表を作るなら、まず10年という1本の線を引き、そのうえで例外を書くほうが運用に乗ります。

電子で受け取った証憑は、紙に出力して保存できない

ここは制度の区分を押さえないと混乱します。電子帳簿等保存制度は3つに分かれていて、義務なのは1つだけです。

制度対象位置づけ
電子帳簿等保存自社が電子で作った帳簿・書類希望者のみ
スキャナ保存紙で受け取った証憑のスキャン希望者のみ
電子取引データ保存電子で授受した証憑法人・個人事業者は対応が必要

国税庁の案内は、対象をこう説明しています。

取引に関して、書面でやりとりしていた場合に保存が必要な書類(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当する電子取引データを受領又は交付した場合、その電子取引データの電子保存が義務付けられています。

保存が必要になるのは請求書だけではありません。メールに添付されたPDFの見積書、取引先サイトからダウンロードした領収書、ECサイトの購入明細。これらはすべて電子取引データです。

一方、紙で受け取った領収書をスキャンする話は別制度で、こちらは希望者向けです。紙で受け取ったものは紙のまま保存してかまいません。「紙をスキャンしなければならない」という誤解がよくありますが、義務はその逆方向、電子で受け取ったものを紙にして済ませられないという話です。

原則の3つのルール

  1. 改ざん防止の措置:タイムスタンプが付与されたデータを受領する/受領したデータにタイムスタンプを付与する/訂正・削除の履歴が残るシステム等で授受・保存する/改ざん防止のための事務処理規程を策定、運用、備付けする、のいずれか
  2. ディスプレイやプリンタ等の備付け
  3. 日付・金額・取引先の3要素で検索できること。加えて、範囲指定検索と2要素の組み合わせ検索ができること、または税務調査等の際にダウンロードの求めに応じられること

注目すべきは1つ目の4番目の選択肢です。事務処理規程を作って運用すれば、専用システムがなくても改ざん防止の要件は満たせます。国税庁も「専用のシステムを導入しない方法もあります」と明記しています。

3つ目についても、基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の事業者などは、ダウンロードの求めに応じられるようにしていれば検索要件を満たす必要がありません。

さらに、検索要件は簡易な方法でも満たせます。表計算ソフトで索引簿を作る方法と、日付・金額・取引先の順に規則性を持たせたファイル名のデータを特定のフォルダに集約する方法が、国税庁の資料に例示されています。

猶予措置に、事前の届出は要らない

対応が間に合っていない会社にとって、ここが最も重要です。

次の2つを両方満たす場合は、電子取引データを保存しておくだけでよい、とされています。

  1. 原則的な保存ルールに従えなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合。事前届出は不要で、「人手不足」「システム整備の資金不足」「システム整備が間に合わない」なども相当の理由として認められます
  2. 税務調査の際に、データのダウンロードの求めと、プリントアウトした書面の提示・提出の求めの、それぞれに応じられるようにしている場合

つまり、今すぐ要件を満たせなくても、データを消さずに残しておくことが最優先です。「対応できていないから紙で印刷して原本は捨てた」が、いちばん避けたい状態になります。

2027年から効く、重加算税の加重

あまり知られていませんが、電子取引データには加算税の面で不利な扱いがあります。

電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為については、重加算税が10%加重されます。理由は国税庁の資料に明記されています。

電子取引データは、紙の書類等を保存する場合に比べ、複製・改ざん行為が容易で、その痕跡が残りにくいという特性があることから

電子化すれば一方的にリスクが下がるわけではない、ということです。証憑を電子で持つほど、改ざんできない状態を自分で作れているかが問われます。

その裏返しとして、デジタルシームレス保存という枠組みが用意されました。要件を満たすと、この10%加重の適用対象から除外されます(令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用)。

要件は3つです。

  • 改ざん防止の確保:データの送受信と保存を、訂正削除履歴が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムで行う
  • 記帳の適正性確保:電子取引データの金額を訂正削除したうえで電子帳簿に記録することができないこと、または訂正削除の事実を確認できるようにしておくこと
  • 電子帳簿との相互関連性確保:電子取引データと電子帳簿との関連性を相互に確認できるようにしておくこと

ただし、対象となるシステムは限定されています。国税庁長官が定める基準に適合するシステムとは、デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス、または預貯金口座における決済データについて、上記の要件に従って保存できる機能を持つシステムを指します。

ここは正直に書きます。一般的なワークフローシステムは、この対象システムには該当しません。デジタルインボイスか口座決済データのどちらかが前提になるためです。承認の記録を電子で残すことと、デジタルシームレス保存の要件を満たすことは、別の話として扱う必要があります。

なお、適用を受けるにはあらかじめ届出書の提出が必要で、適用を受ける年分(事業年度)の法定申告期限までに提出します。猶予措置が届出不要なのとは逆なので、混同しないでください。

証憑が集まらない本当の理由

制度の話をここまで書きましたが、現場でいちばん多い困りごとは要件の解釈ではありません。そもそも証憑が集まらないことです。

集まらない理由は、たいてい1つに行き着きます。申請と証憑が、別の場所にあるからです。

申請は申請システムに、証憑はメールの添付ファイルや個人のフォルダにある。承認が終わった時点で両者はつながっておらず、経理が月末にメールを遡って探す。この構造だと、件数が増えるほど回収率は下がります。

打ち手は2通りあります。

1つは、申請の入口で証憑を一緒に受け取ること。承認の条件に証憑の添付を含めてしまえば、承認された時点で申請と証憑が1本に紐づきます。後から集める作業そのものが消えます。

もう1つは、証憑が発生しない形に変えること。費用を法人一括請求に寄せれば、従業員が立て替えて領収書を持ち帰る場面自体が減ります。詳しくは立替精算をなくす方法|法人カード・一括請求の違いで整理しています。

証憑の管理コストを下げる方法として、管理を強くするより、管理すべき対象を減らすほうが効く場面は少なくありません。

よくある質問(FAQ)

証憑の読み方は何ですか?

しょうひょうです。「証ひょう」と交ぜ書きされることもあります。「憑」は「よりどころ」を意味する字で、証拠のよりどころという成り立ちです。

証憑と証憑書類は違いますか?

実務上はほぼ同じ意味で使われます。厳密には、証憑が「取引を裏づける材料」全般を指し、証憑書類はそのうち書類の形になっているものを指す、という整理もできますが、使い分けを気にする必要はありません。

証憑は何年保存すればよいですか?

税法は7年、欠損金が生じた事業年度は10年です。会社法は会計帳簿の閉鎖の時から10年とされており、株式会社であれば10年で揃えるのが安全です。なお税法の7年は受領日からではなく、その事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日から数えます。

メールで届いた請求書を印刷して保存してはいけませんか?

印刷すること自体は問題ありませんが、印刷したものだけを保存して元データを消すと、電子取引データ保存の要件を満たせません。元データを残したうえで、必要に応じて印刷してください。

要件に対応できていません。すぐ罰則になりますか?

猶予措置があります。所轄税務署長が相当の理由があると認め、かつ税務調査の際にダウンロードの求めと書面の提示・提出の求めの両方に応じられるなら、データを保存しておくだけでよいとされています。事前の届出も不要です。まずはデータを消さないでください。

紙で受け取った領収書もスキャンが必要ですか?

必要ありません。スキャナ保存は希望者向けの制度です。紙で受け取ったものは紙のまま保存してかまいません。

専用のシステムがないと電子取引データ保存に対応できませんか?

できます。改ざん防止は事務処理規程の策定・運用・備付けでも満たせますし、検索要件は索引簿や規則性のあるファイル名でも満たせます。国税庁自身が例示している方法です。

ワークフローシステムを入れれば証憑の保存要件は満たせますか?

満たせません。ワークフローシステムが担えるのは、申請と証憑を紐づけて、承認の記録を残す部分です。検索要件や改ざん防止をどう満たすかは、証憑を保存する側の仕組みで決まります。

1Approvalでの実現方法

1Approvalが扱うのは、証憑が申請から切り離されない状態をつくる部分です。

申請の種類ごとに必要な証憑を定義し、添付がなければ申請が進まないようにできます。承認が下りた時点で、申請内容・承認者・承認日時・添付された証憑が1件の記録として残ります。経理が後から突き合わせる作業が減るのは、この紐づけが申請時点で終わっているためです。

また、出張や消耗品の手配を1Approval側に寄せる構成を取ると、費用が法人一括請求にまとまり、従業員が立て替えて証憑を持ち帰る場面そのものが減ります。

一方で、保存要件を満たす責任は会計・証憑管理の側にあります。前述のとおり、デジタルシームレス保存の対象システムにも該当しません。1Approvalが埋めるのは「証憑が集まらない」という手前の問題で、「集まった証憑をどう保存するか」は別の仕組みの役割です。ここを曖昧にすると、対応済みのつもりで要件を外す結果になります。

まとめ

証憑は法令用語ではありません。法人税法施行規則は「注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類」と列挙しているだけで、自社が作成した書類の写しも含まれます。

保存期間の時計は2つあります。税法は7年で、起算日は受領日ではなくその事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日。受領日から数えると8年を超えます。会社法は会計帳簿の閉鎖の時から10年です。実務は長いほうに合わせて10年で揃えるのが安全です。

電子で受け取った証憑は、印刷したものだけを残す運用では要件を満たせません。ただし猶予措置があり、事前の届出も不要です。人手不足や資金不足も相当の理由として認められます。対応が間に合っていないなら、まずデータを消さないことが最優先です。

そして、電子取引データに関する隠蔽・仮装には重加算税の10%加重があります。電子化は一方的にリスクを下げる話ではありません。

最後に実務の順番です。制度の細部を詰める前に、自社の証憑がどこにあるかを数えてください。申請システムの外にある証憑が多いなら、要件の解釈より先に、申請と証憑を1本につなぐほうが効きます。

主な参照先

※本記事は2026年10月時点で確認した公開情報をもとに整理したものです。条文の引用はe-Gov法令検索の本文、制度の説明は上記の国税庁資料によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の案件に対する助言ではありません。保存期間の設定や要件の充足については、顧問税理士・監査人にご確認ください。

監修

伏見 匡矩

伏見 匡矩

株式会社エイチ 代表取締役社長

株式会社エイチ代表取締役社長。出張手配・会場手配の実務を起点に、申請・承認から購買実行までを一体で扱う1Approvalを立ち上げ、事業責任者としてプロダクト設計に携わる。承認されたあとの購買・手配をどう自動化するかという観点から、Microsoft 365を基盤とした申請・承認の設計を扱っている。

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