内部統制のモニタリングとは|2種類と報告の仕組み
モニタリングは内部統制の6つの基本的要素の1つで、基準は日常的モニタリングと独立的評価の2種類を挙げています。それぞれの定義を原文で確認し、見つけた問題を報告する仕組みまでが要素に含まれること、そして「承認ログを貯めること」と「モニタリング」が別物である理由、承認フローで具体的に何を見るかを整理します。
ワークフローシステムを入れると、承認の記録は自動的に溜まっていきます。誰がいつ何を承認したかが、申請1件ごとに残る。
ここで多くの組織が止まります。記録は溜まっているが、誰も見ていない。
この状態を内部統制の言葉で言うと、モニタリングが無いということになります。そして基準は、モニタリングを6つの基本的要素の1つに数えています。1つでも欠ければ、4つの目的すべてに影響します。
モニタリングとは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスをいう。
本記事では、基準が挙げる2種類のモニタリングと、見落とされやすい報告の仕組み、そして承認フローで具体的に何を見るかを整理します。
この記事の要点
- モニタリングは6つの基本的要素の1つ。「内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセス」
- 種類は2つ。業務に組み込まれて行われる日常的モニタリングと、業務から独立した視点で行う独立的評価
- 独立的評価は内部監査だけを指さない。経営者、取締役会、監査役等、内部監査等を通じて実施される
- 見つけた問題を報告する仕組みの整備までが、この要素に含まれる
- 評価すること自体が1つのプロセスで、評価する者は各基本的要素を予め十分に理解する必要がある
- 承認ログを貯めることは、まだモニタリングではない。見る担当と頻度が決まって初めて要素として機能する
2種類ある
基準は、モニタリングを2つに分けています。
モニタリングには、業務に組み込まれて行われる日常的モニタリング及び業務から独立した視点から実施される独立的評価がある。両者は個別に又は組み合わせて行われる場合がある。
日常的モニタリング
日常的モニタリングは、内部統制の有効性を監視するために、経営管理や業務改善等の通常の業務に組み込まれて行われる活動をいう。
ポイントは通常の業務に組み込まれてという部分です。別枠の点検作業ではありません。
基準は財務報告に関する例として、各業務部門における帳簿記録と実際の製造・在庫・販売数量等との照合を挙げています。実施基準では、売掛金の管理で、適切な管理者が担当者の残高確認の実施過程と差異の分析・修正作業を監視する例が示されています。
この例で押さえておきたいのは、不一致が見つかったときに修正だけで終わらないという書き方です。実施基準は、不一致の確認が「販売プロセスの問題点を発見してその改善を促すことにつながり得る」としています。モニタリングは異常の検知だけでなく、プロセスの見直しにつながる位置づけです。
独立的評価
独立的評価は、日常的モニタリングとは別個に、通常の業務から独立した視点で、定期的又は随時に行われる内部統制の評価であり、経営者、取締役会、監査役等、内部監査等を通じて実施されるものである。
誤解されやすいのは、独立的評価=内部監査部門の仕事という理解です。基準の列挙は「経営者、取締役会、監査役等、内部監査等」であり、内部監査は4つ目に「等」付きで出てきます。
内部監査部門を持たない規模の組織でも、経営者や監査役による定期的な確認は独立的評価に当たり得ます。部署が無いから独立的評価ができない、ということにはなりません。
見落とされやすい「報告の仕組み」
基準はモニタリングの説明の中に、評価プロセスと報告を含めています。ここが抜けている解説が多い部分です。
日常的モニタリング及び独立的評価により明らかになった内部統制上の問題に適切に対処するため、当該問題の程度に応じて組織内の適切な者に情報を報告する仕組みを整備することが必要である。この仕組みには、経営者、取締役会、監査役等に対する報告の手続が含まれる。
見つけるところまででは終わりません。 程度に応じて誰に上げるかの手続まで含めて、1つの要素です。
実務では、ここが「担当者が気づいたが、言う先がない」という形で欠けます。異常を見つけた人が、どの程度のものを誰に報告するのかが決まっていなければ、検知は組織の判断につながりません。
もう1つ、評価プロセスについての記述も実務に効きます。
内部統制を評価する者は、組織の活動及び評価の対象となる内部統制の各基本的要素を予め十分に理解する必要がある。
評価は、理解している人がやらないと成立しません。新任の担当者に点検表だけ渡して回す運用は、この条件を満たしません。
承認フローで、何を見るか
ここからは実務です。承認の記録が残っているとして、日常的モニタリングとして何を見るか。
| 見るもの | 何の兆候か |
|---|---|
| 承認が滞留している申請の件数と日数 | ルート設計か承認者の負荷の問題 |
| 代理承認の頻度 | 特定の承認者が実質機能していない可能性 |
| 決裁金額基準のすぐ下に集まる申請 | 基準を避けるための分割発注の可能性 |
| 差し戻しの多い申請種別 | 申請フォームか事前説明の不足 |
| 申請から承認までが極端に短い案件 | 内容を見ずに通している可能性 |
どれも、承認ログがあれば数えられるものです。逆に言えば、ログがあっても数えなければ何も分かりません。
頻度は、月次で十分に機能します。重要なのは細かさより、決まった周期で必ず見ることです。基準が「継続的に評価する」と書いているのは、精度ではなく継続性を求めているためです。
分割発注の兆候については職務権限規程の作り方|決裁金額の決め方、代理承認の設計については代理承認の設計|承認者不在で止めない、証跡を壊さないで扱っています。
「ログを貯めること」と「モニタリング」は別物
ワークフローシステムの導入検討で、よく次の説明が出てきます。
承認履歴がすべて記録されるため、内部統制に対応できます
記録が残ることは必要条件ですが、それだけではモニタリングという要素を満たしません。基準が求めているのは継続的な評価であって、データの保存ではないためです。
内部統制の枠組み全体での位置づけは内部統制とは|4つの目的と6つの基本的要素で整理していますが、6つの要素のうち、システム導入で自動的に埋まるものはありません。統制活動(承認ルート)は設定で作れますが、モニタリングは人が見る約束を決めない限り存在しません。
導入時に決めておくことは3つです。
- 誰が見るか(日常的モニタリングの担当)
- どの頻度で見るか(月次など)
- 何が出たら誰に上げるか(報告の手続)
この3つが決まっていなければ、記録は貯まるだけになります。
よくある質問(FAQ)
モニタリングと内部監査は同じものですか?
違います。モニタリングは内部統制の基本的要素の1つで、その中に日常的モニタリングと独立的評価があります。内部監査は独立的評価を実施する主体の1つで、基準は「経営者、取締役会、監査役等、内部監査等」と列挙しています。
日常的モニタリングと独立的評価は両方必要ですか?
基準は「両者は個別に又は組み合わせて行われる場合がある」としており、必ず両方という書き方はしていません。ただし日常的モニタリングは業務の中にいる人が行うため、業務そのものに組み込まれた問題は見つけにくくなります。独立した視点を別に置く意味はここにあります。
内部監査部門がない会社はどうすればよいですか?
独立的評価の実施主体は内部監査部門に限られません。経営者や監査役等による定期的な確認も独立的評価に当たり得ます。部署の有無ではなく、通常の業務から独立した視点で見る機会があるかが問われます。
モニタリングの頻度はどれくらいが適切ですか?
基準に具体的な頻度の定めはありません。「継続的に評価する」とされているため、重要なのは細かさより決まった周期で必ず実施することです。承認フローであれば月次で十分に機能します。
承認ログを保存していれば、モニタリングをしていることになりますか?
なりません。モニタリングは継続的に評価するプロセスであり、記録の保存はその前提にすぎません。見る担当と頻度が決まっていない状態は、モニタリングが無い状態です。
モニタリングで問題が見つかったら、どうすればよいですか?
基準は、問題の程度に応じて組織内の適切な者に報告する仕組みの整備が必要だとしており、この仕組みには経営者・取締役会・監査役等への報告手続が含まれるとしています。報告先と基準を先に決めておくことが前提になります。
誰がモニタリングを担当すべきですか?
基準は「評価する者は、組織の活動及び評価の対象となる内部統制の各基本的要素を予め十分に理解する必要がある」としています。業務と統制の両方を理解している人が条件で、点検表だけ渡して新任者に回す運用は想定されていません。
ワークフローシステムを入れればモニタリングは自動化できますか?
集計までは自動化できますが、要素としては満たしません。何を異常とみなすか、誰に報告するかは組織が決める部分で、システムの設定では代替できません。
1Approvalでの実現方法
1Approvalが担えるのは、モニタリングの材料を揃えるところまでです。
申請・承認・差し戻しが1つの経路に通るため、滞留日数、代理承認の件数、申請種別ごとの差し戻し率、決裁金額の分布といった数字が、追加の集計作業なしに取り出せる状態になります。前節の表に挙げた観点は、いずれもこの記録から数えられます。
一方で、見る担当と頻度を決めるのは運用側の仕事です。ここはシステムの設定項目にはありません。導入時に「月初に総務課長が前月分を確認し、滞留10日超と自己承認疑いは管理部長へ報告する」といった形まで決めておくと、記録が貯まるだけの状態を避けられます。
報告の手続についても同じです。1Approvalは異常値を一覧にできますが、それを誰に上げるかの基準は、社内で先に合意しておく必要があります。
まとめ
モニタリングは、内部統制の6つの基本的要素の1つで、「内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセス」と定義されています。
種類は2つ。通常の業務に組み込まれて行われる日常的モニタリングと、業務から独立した視点で定期的又は随時に行われる独立的評価です。独立的評価の実施主体は内部監査部門に限られず、経営者・取締役会・監査役等も含まれます。
そして、見つけた問題を報告する仕組みの整備までがこの要素に含まれます。程度に応じて誰に上げるかが決まっていなければ、検知は判断につながりません。
最後に、実務でいちばん多い誤解を繰り返します。承認ログを貯めることは、まだモニタリングではありません。 導入時に、見る担当・頻度・報告先の3つを決めてください。決めていなければ、記録は増えるだけです。
主な参照先
※本記事は2026年11月時点で確認した公開情報をもとに整理したものです。基準・実施基準の引用は上記の意見書本文によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の案件に対する助言ではありません。自社の内部統制の評価については、監査人および専門家にご確認ください。
監修
伏見 匡矩
株式会社エイチ 代表取締役社長
株式会社エイチ代表取締役社長。出張手配・会場手配の実務を起点に、申請・承認から購買実行までを一体で扱う1Approvalを立ち上げ、事業責任者としてプロダクト設計に携わる。承認されたあとの購買・手配をどう自動化するかという観点から、Microsoft 365を基盤とした申請・承認の設計を扱っている。
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