出張1件の工数は何分か|「85%削減」の算出根拠
1Approvalが掲げる「間接業務工数85%削減」「年間3,600時間削減」がどの前提から算出された数字なのかを、11工程それぞれの標準時間と計算式まで公開します。自社の条件に当てはめて再計算できる形で整理しました。
「間接業務工数85%削減」「年間3,600時間削減」——こうした数字は多くのサービスサイトに並んでいますが、何をどう数えた結果なのかが書かれていることはほとんどありません。数字だけを見ても、自社に当てはめたときにどうなるかは判断できません。
この記事では、1Approvalが使っているこれらの数字について、どの工程を何分と置き、何と何を比較して算出しているのかを計算式ごと公開します。コスト削減シミュレーターが内部で行っている計算と同じ内容です。自社の条件で再計算できるよう、前提条件と限界も併せて明記します。
この記事の要点
- 出張1件あたりの間接業務は、出張者・承認者・経理の3者合計で最大210分(3時間30分)。これを11工程に分解して積み上げている。
- 承認と手配を直結させた場合の残作業は30分(事前申請20分+出張報告5分+精算承認5分)。差分の180分が削減分で、210分に対して**85.7%**となる。これが「85%削減」の根拠。
- 「年間3,600時間削減」は月100件の出張がある企業を想定した数字。180分 × 100件 × 12か月 ÷ 60 = 3,600時間。出張件数が異なれば結果も比例して変わる。
- ただしこれらは各工程の標準時間を置いたモデル計算であり、実測値ではない。すでに出張規程が明確な企業やBTM契約済みの企業では、削減率は85%より小さくなる。
- 自社の条件(出張規程の有無・事前申請の運用・仮払いの有無・BTM契約の有無)を入れると、該当する工程が自動的に除外されて再計算される。
出張1件に何分かかっているのか?(11工程の内訳)
現状の運用を、担当者ごとに11の工程へ分解します。数値は1出張あたりの分数です。
| 担当 | 工程 | 現状 | 1Approval導入後 | 削減 |
|---|---|---|---|---|
| 出張者 | 計画・規定チェック | 10分 | 0分 | 10分 |
| 出張者 | 見積り取得・比較 | 30分 | 0分 | 30分 |
| 出張者 | 事前申請・承認依頼 | 20分 | 20分 | 0分 |
| 出張者 | 仮払い申請 | 10分 | 0分 | 10分 |
| 出張者 | 承認取得後の本予約 | 20分 | 0分 | 20分 |
| 出張者 | 出張報告 | 5分 | 5分 | 0分 |
| 出張者 | 出張後精算(領収書収集等) | 20分 | 0分 | 20分 |
| 承認者 | 事前出張承認(価格変更・再申請含む) | 40分 | 0分 | 40分 |
| 承認者 | 経費精算承認 | 25分 | 5分 | 20分 |
| 経理 | 精算・規定チェック・振込 | 15分 | 0分 | 15分 |
| 経理 | 会計仕訳・システム登録 | 15分 | 0分 | 15分 |
| 合計 | 210分 | 30分 | 180分 |
導入後も残る30分は、**事前申請(20分)・出張報告(5分)・精算承認の一部(5分)**です。これらは業務判断そのものであり、自動化の対象にしていません。「承認という意思決定は人が行い、その後の作業は自動化する」という設計方針がそのまま数字に現れています。
なぜ承認者の工数が65分と大きいのか
11工程のうち最も大きいのは、承認者の「事前出張承認」40分です。単に承認ボタンを押す時間ではなく、価格変更による再申請の差し戻しと再確認を含んだ時間として計上しています。
承認待ちの間に航空券やホテルの価格・在庫が変わると、出張者は取り直して再申請し、承認者はもう一度確認することになります。この往復が承認者側の工数を押し上げます。承認と予約が同一システム上で連携していれば、この往復自体が発生しません。
「85%削減」の計算式
削減率 = 削減分数 ÷ 現状分数
= 180分 ÷ 210分
= 85.7%
したがって「85%削減」は、11工程すべてが手作業である企業を基準にした数字です。
「年間3,600時間削減」の計算式
年間削減時間 = 1件あたり削減分数 × 月間出張件数 × 12か月 ÷ 60
= 180分 × 100件 × 12 ÷ 60
= 3,600時間
つまり 月100件(年1,200件)の出張がある企業を想定した数字です。出張件数に比例するため、規模が変われば結果も変わります。
| 月間出張件数 | 年間削減時間 |
|---|---|
| 10件 | 360時間 |
| 30件 | 1,080時間 |
| 50件 | 1,800時間 |
| 100件 | 3,600時間 |
| 300件 | 10,800時間 |
金額換算する場合は、ここに対象者の時間単価を掛けます。時間単価3,000円・月100件であれば、年間1,080万円が削減額の目安となります。
自社の条件で数字はどう変わるのか?
すべての企業で210分がかかるわけではありません。次の4条件に当てはまる場合、該当工程は最初から計上されません。
| 条件 | 除外される工程 | 影響 |
|---|---|---|
| 出張規程が存在し、従業員が明確に認識している | 計画・規定チェック(10分) | -10分 |
| 事前申請を実施していない | 事前申請・承認依頼(20分) | -20分 |
| 仮払い申請・現金の事前手配を実施していない | 仮払い申請(10分) | -10分 |
| BTM(出張管理・法人一括請求サービス)と契約済み | 出張後精算(20分) | -20分 |
たとえば出張規程が整備済みかつBTM契約済みの企業であれば、現状は210分ではなく180分となり、削減分は150分、削減率は83.3%になります。すでに手を打っている企業ほど、削減率の数字は小さくなります。
自社の条件を入力した結果はコスト削減シミュレーターで確認できます。
11工程のうち手戻りを生んでいるのが再予約です。なぜ再予約が繰り返し発生するのかという構造は、出張申請の手動再予約はなぜ多発するのかで詳しく分解しています。
実際の企業でどの工程が消えたのかは、ユーグレナ様|出張調整を1/4に短縮した導入事例をご覧ください。
この試算にはどんな限界があるのか?
数字を使う側・読む側の双方にとって重要なので、限界を明記します。
- 実測値ではなく標準時間によるモデル計算です。 各工程の分数は、出張手配・経費精算の実務ヒアリングに基づく想定値であり、特定企業での計測結果ではありません。
- 企業ごとの実態で変動します。 承認者の人数、決裁金額の基準、海外出張の比率、既存システムの連携状況によって、現状分数も導入後分数も変わります。
- 削減時間がそのままコスト削減になるとは限りません。 浮いた時間が他の業務に充てられるか、人件費の削減につながるかは、企業の体制次第です。金額換算はあくまで機会費用の目安としてご覧ください。
- 導入・移行にかかる工数は含んでいません。 初期設定や社内周知の工数は別途必要です。
こうした前提を踏まえたうえで、「自社の出張1件に何分かかっているか」を11工程に分解して把握すること自体に価値があります。削減余地がどの担当者のどの工程にあるのかが見えれば、1Approvalの導入可否にかかわらず、改善の着手点が決まります。
よくある質問(FAQ)
85%削減はすべての企業で実現できますか?
いいえ。85%は11工程すべてが手作業である企業を基準にした数字です。出張規程が整備済み、BTM契約済みといった企業では、現状工数そのものが小さいため削減率も下がります。
各工程の分数はどのように決めたのですか?
出張手配・経費精算の実務ヒアリングに基づく標準時間として設定しています。特定企業での計測値ではないため、自社の実態と比較して読み替えてください。
承認者の「事前出張承認40分」は長すぎませんか?
単純な承認操作の時間ではなく、承認待ちの間に価格・在庫が変動した際の差し戻しと再確認を含めた時間として計上しています。この往復が発生しない企業では、この数字は小さくなります。
導入後に残る30分は何ですか?
事前申請(20分)、出張報告(5分)、経費精算承認の一部(5分)です。いずれも人が判断すべき業務のため、自動化の対象外としています。
自社の条件で試算できますか?
コスト削減シミュレーターに月間出張件数・時間単価・4つの条件を入力すると、担当者別の削減時間と年間削減コストが表示されます。
まとめ
1Approvalが掲げる「85%削減」は、出張1件あたりの間接業務210分が30分になるという計算から出ています。「年間3,600時間」は、そこへ月100件という出張規模を掛けた数字です。
数字そのものよりも、11工程のどこに時間が溶けているかを把握することが実務上は重要です。見積り取得30分、承認の往復40分、精算まわり50分——この内訳が自社と大きく違うのであれば、優先して手を打つべき工程も変わります。
まずは自社の出張1件を11工程に分解して、どこに何分かかっているかを書き出してみてください。
監修
伏見 匡矩
株式会社エイチ 代表取締役社長
- 国内旅行業務取扱管理者
株式会社エイチ代表取締役社長。出張手配・会場手配の実務を起点に、申請・承認から購買実行までを一体で扱う1Approvalを立ち上げ、事業責任者としてプロダクト設計に携わる。国内旅行業務取扱管理者。出張手配の実務とBTM各社の比較検証を踏まえ、承認・予約・精算をつなぐ設計を扱っている。
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