じゃらんJCSと楽天Raccoの違い|無料の範囲
じゃらんコーポレートサービスと楽天Raccoは、どちらも初期費用・月額費用が無料の法人向け出張予約サービスです。両者の違いを予約できる範囲・決済方法・管理機能で整理し、無料で提供できる理由と、BTMとの境界線がどこにあるかを解説します。無料で足りる会社と、足りなくなる会社の分かれ目まで扱います。
法人向けの出張手配を調べると、「初期費用・月額費用が無料」というサービスが出てきます。代表的なのが、リクルートのじゃらんコーポレートサービス(JCS)と、楽天グループのRacco(ラッコ)です。
どちらも本当に無料で、立替精算をなくす効果もあります。ただし、BTM(出張管理システム)とは別のものです。この境界を理解しないまま導入すると、「思っていたことができない」が起きます。
本記事では、2つの違いを整理したうえで、なぜ無料なのか、そしてどこから足りなくなるのかを扱います。
※ 本記事の仕様・条件は2026年9月時点で確認した公開情報にもとづきます。プランや対応範囲は変わるため、導入前に各社の公式サイトでご確認ください。
この記事の要点
- どちらも初期費用・月額費用が無料。追加費用も発生しません。
- 共通するのは、立替精算をなくすこと。宿泊費を法人へ一括請求できます。
- 違いは主に予約できる範囲。Raccoは契約タイプによって航空券やレンタカーまで広がります。
- 無料で提供できるのは、旅行サービスの販売チャネルだからです。予約が入ることが収益になります。
- 足りなくなる分かれ目は3つ。承認をシステムで通したい、規程で縛りたい、宿泊以外も集約したい。
2つの違い
まず全体像です。
| じゃらんコーポレートサービス | Racco | |
|---|---|---|
| 提供 | 株式会社リクルート | 楽天グループ株式会社 |
| 初期費用・月額 | 無料 | 無料 |
| 予約の母体 | じゃらんnet | 楽天トラベル |
| 国内宿泊 | ○ | ○ |
| 航空券・レンタカー | — | 契約タイプによる |
| 法人一括決済 | ○ | ○(TypeA) |
| 支払方法の選択 | 予約の都度選べる(現地決済・コーポレートカードなど) | タイプで決まる |
| 法人限定プラン | ○ | ○(Racco限定のシークレットプラン) |
| ポイント | 予約者のリクルートIDへ付与 | 予約した従業員へ楽天ポイント |
| 管理画面 | 予約・キャンセル状況をリアルタイムで確認 | 出張情報をリアルタイムで把握、カスタム項目あり |
じゃらんコーポレートサービス
じゃらんnetの在庫をそのまま法人向けに使える形です。導入実績は24,000社以上とされています。
特徴は支払方法の柔軟さです。法人一括決済で会社が後払いにするか、現地決済にするか、コーポレートカードを使うかを、予約の都度選べます。
部署や案件によって支払い方を変えたい場合、この柔軟さが効きます。逆に言えば、選べるぶん運用ルールを決めておかないとバラバラになります。
Racco
楽天トラベルの法人向けサービスで、契約タイプによって範囲が変わるのが特徴です。
- TypeA — 法人一括請求(後払い)。国内宿泊に加えて、国内航空券、海外航空券、国内レンタカーの予約に対応
- TypeB — 個人精算。国内宿泊のみ
このほか無料の管理サービスとして Racco LITE も用意されています。ANA@desk や JAL ONLINE との連携にも触れられています。
つまりTypeAを選べば、宿泊以外にも範囲が広がります。ここがJCSとの実質的な違いです。
管理画面ではカスタム項目を設定でき(18項目まで)、部門コードや案件番号を持たせて集計に使えます。
共通して得られるもの
どちらを選んでも、同じ効果が2つあります。
立替精算がなくなる
法人一括決済(一括請求)を使うと、出張者が宿泊費を立て替える必要がなくなります。領収書の回収も、精算書類の作成も減ります。
これは金額以上に効きます。立替精算をなくす方法で整理したとおり、立替は従業員の金銭的負担であると同時に、経理の月末作業そのものです。
法人限定の料金が使える
どちらも法人向けの限定プランがあります。Raccoは法人会員だけが予約できるシークレットプランを持っています。
ただし全部屋・全プランが安くなるわけではありません。自社が実際に泊まる価格帯とエリアで、どの程度の差が出るかを確認してください。
なぜ無料で提供できるのか
ここを理解しておくと、境界線が見えます。
これらは出張管理システムではなく、旅行サービスの販売チャネルです。じゃらんも楽天トラベルも、宿泊予約が入れば収益になります。法人の予約をまとめて取り込めるなら、管理画面の提供コストは十分に回収できます。
つまり予約が入ることが前提の無料です。だから、
- 予約に関する機能は充実している(在庫、価格、決済、実績の可視化)
- 予約の外にある機能は、提供する動機がない
この非対称が、次の節の限界につながります。
どこから足りなくなるのか
分かれ目は3つです。
1. 承認をシステムで通したい
どちらも申請と承認のワークフローを持ちません。予約はできますが、「この出張に行ってよいか」の承認は別の場所で行うことになります。
実務では、Teamsやメールで上長の了解を取ってから予約する、という運用になります。すると承認の記録と予約の記録が別々に存在し、対応しているかは誰も突合していない状態になります。
出張の不正10類型で扱ったとおり、承認と実行が紐づいていないことは統制上の穴になります。
2. 規程で縛りたい
宿泊費の上限、グレードの制限、エリアごとの基準。こうした規程を予約の瞬間に効かせる機能はありません。
事後に管理画面で「上限を超えた予約」を探すことはできますが、それは支払った後です。出張規程の作り方で整理したとおり、逸脱は予約が実行される瞬間に起きます。
3. 宿泊以外も集約したい
JCSは宿泊が中心です。RaccoはTypeAで航空券とレンタカーまで広がりますが、新幹線をはじめとする鉄道や、現地の移動は別になります。
結果として、宿泊はこのサービス、鉄道は別の方法、タクシーは立替、という形で分散します。出張旅費の統制で扱った「手配が個人任せだと欠けるもの」がそのまま残ります。
無料で足りる会社、足りない会社
判断の目安です。
| 自社の状況 | 判断 |
|---|---|
| 出張が宿泊中心で、月に数件 | 無料で十分 |
| 立替精算をなくすことが最大の目的 | 無料で足りる |
| 承認は口頭・チャットでよい | 無料で足りる |
| 規程の上限を予約時に効かせたい | 足りない |
| 交通費も含めて一本化したい | 足りない |
| 承認と実行の紐づけを記録に残したい | 足りない |
| 出張データを分析して削減したい | 範囲による |
まず無料で始めて、足りなくなったら考えるという順序は合理的です。立替がなくなるだけでも効果があり、失うものがありません。
ただし移行のコストは見積もっておいてください。一度運用に乗せてから別のサービスへ移ると、利用者への再教育が発生します。BTMが浸透しない理由と乗り換えの判断で扱ったとおり、二度目の入れ替えには現場がついてきません。
BTMとの比較検討に進むなら、法人出張管理BTM13社比較で選び方の視点を整理しています。
よくある質問(FAQ)
本当に無料ですか?
初期費用・月額費用はかかりません。収益は宿泊などの予約から生じる構造です。予約を通さずに管理機能だけ使う、という使い方は想定されていません。
2つを併用できますか?
技術的には可能ですが、請求と実績が2つに分かれます。集約が目的なら、どちらかに寄せてください。在庫の差でどうしても両方要る場合を除き、併用は目的と矛盾します。
どちらが安く泊まれますか?
一概には言えません。自社が実際に泊まるエリアと価格帯で、同じ日程を両方で検索して比べてください。在庫と法人プランの内容が違うため、条件によって逆転します。
承認機能がないと何が困りますか?
承認の記録と予約の記録が別々になるため、承認していない出張の予約が混ざっても気づけません。件数が少ないうちは目視で足りますが、増えると追えなくなります。
出張データの分析はできますか?
予約データの範囲でできます。ただしそのサービスを通した分だけです。鉄道や立替の支出は入らないので、出張費の全体像にはなりません。
無料から有料のBTMへ移るタイミングは?
3つのどれかが起きたときです。規程を予約時に効かせたくなった、交通費も一本化したくなった、承認と実行の紐づけを記録に残す必要が出た。件数の多さではなく、要件の種類で判断してください。
1Approvalでの実現方法
1Approvalは、いま使っている承認ワークフロー(kintone、Microsoft 365、Teams、Google Workspace)の上で、承認が降りた時点で手配まで完了させる仕組みです。無料の予約サービスとは、担当する範囲が違います。
| JCS / Racco | 1Approval | |
|---|---|---|
| 予約 | ○ | ○ |
| 立替の解消 | ○(宿泊など) | ○ |
| 申請・承認 | — | ○(既存のワークフローを使う) |
| 規程の適用 | — | ○(手配の時点で効く) |
| 承認と実行の紐づけ | — | ○ |
| 対象範囲 | 宿泊中心(Raccoは航空券等も) | 交通・宿泊・購買・会場 |
この構造では、次のことが起きます。
- 承認が手配のトリガーになる — 承認を経ていない手配が発生しない
- 規程が予約の瞬間に効く — 上限超過を精算時ではなく手配時に扱える
- 費用が法人一括請求にまとまる — 宿泊も交通も同じ請求に載る
- 承認ルートの設計はそのまま使える — 既存のワークフローを作り直す必要がない
無料サービスと競合するものではありません。宿泊の立替をなくすだけで足りるなら、無料で十分です。承認・規程・範囲の3つのどれかが要件になったときに、検討の対象になります。
まとめ
じゃらんコーポレートサービスと Racco は、どちらも初期費用・月額費用が無料の法人向け出張予約サービスです。共通して立替精算をなくす効果があり、法人限定の料金が使えます。
違いは主に予約できる範囲で、RaccoはTypeAを選べば航空券やレンタカーまで広がります。JCSは支払方法を予約の都度選べる柔軟さがあります。
無料で提供できるのは、これらが旅行サービスの販売チャネルだからです。予約に関する機能は充実していますが、予約の外にある機能を提供する動機がありません。
足りなくなる分かれ目は3つ。承認をシステムで通したい、規程で縛りたい、宿泊以外も集約したい。このどれかが要件になるまでは、無料で始めて問題ありません。
ただし移行のコストは見積もっておいてください。一度運用に乗せてから入れ替えると、利用者への再教育が発生します。
主な参照先
監修
伏見 匡矩
株式会社エイチ 代表取締役社長
- 国内旅行業務取扱管理者
株式会社エイチ代表取締役社長。出張手配・会場手配の実務を起点に、申請・承認から購買実行までを一体で扱う1Approvalを立ち上げ、事業責任者としてプロダクト設計に携わる。国内旅行業務取扱管理者。出張手配の実務とBTM各社の比較検証を踏まえ、承認・予約・精算をつなぐ設計を扱っている。
経歴・運営者情報を見るこの記事のテーマ
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