海外BTM・経費管理7社比較|Navanと日本の差
Navan・Perk(旧TravelPerk)・Expensify・Brex・Ramp・Egencia・Spotnanaの7サービスを、出張予約・経費精算・法人カードの統合度と料金で比較。海外では1プラットフォームに統合されAIエージェント化が進む一方、日本企業がそのまま使えない4つの理由まで整理します。
日本で出張管理を整えようとすると、BTM(旅行会社系の手配システム)・経費精算システム・法人カードの3つを別々に選ぶことになります。ピカパカやJTBビズバンスで手配し、ConcurやRakusで精算し、カードは別途契約する——これが標準的な構成です。
海外は事情が違います。Navan、Perk(旧TravelPerk)、Brex、Rampといったサービスは、この3つを最初から1つのプラットフォームに統合したうえで売っています。予約した瞬間に経費データが立ち、法人カードで決済され、精算という工程自体が発生しない。立替精算をなくすのではなく、そもそも立替が起きない設計です。
本記事では、海外で検討対象になる7サービスを同じ軸で比較し、日本企業が実際に使えるのはどれなのかを整理します。国内サービスの比較は法人出張管理BTM13社比較の記事を参照してください。
結論:海外は「出張・経費・法人カード」が1つになっている
先に要点をまとめます。
- 7サービスのうち5つが、出張予約と経費精算と法人カードを1製品で持っている。日本のように3レイヤーに分かれていない
- 日本法人がそのまま契約できるのは、実質 Egencia(Amex GBT)だけ。BrexとRampは米国登記法人+EINが前提、Perkは日本語ローカライズの記載がなく、Navanも日本語対応の公式情報を確認できませんでした
- 共通するトレンドはAIエージェント化。Ramp の Policy Agent は全経費を自動レビューし、Perk は MCP 対応で外部のAIアシスタントから操作でき、Egencia も会話型の Egencia AI を投入しています
- 2026年の最大のニュースは Capital One による Brex 買収(51.5億ドル、2026年1月22日発表・4月7日完了)。独立系スタートアップだった領域が、カード発行網を持つ銀行に取り込まれ始めています
タイプ別の整理
| タイプ | 該当サービス | 性格 |
|---|---|---|
| 出張起点の統合型 | Navan/Perk | 旅行の予約体験から入り、経費とカードまで取り込んだ |
| 支出起点の統合型 | Brex/Ramp | 法人カードと経費管理から入り、出張予約を後から足した |
| 経費特化型 | Expensify | 経費精算が本体。カードと出張は付随機能 |
| 従来型TMCの進化系 | Egencia(Amex GBT) | 旅行会社の実務・サポート網の上にAIを載せた |
| インフラ提供型 | Spotnana | 他社のTMCやサービスの裏側に敷かれるAPI基盤 |
【比較表】海外の出張・経費管理7サービス
| 比較項目 | Navan | Perk(旧TravelPerk) | Expensify | Brex | Ramp | Egencia | Spotnana |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 本社 | 米 | 英・ロンドン | 米 | 米 | 米 | 米(Amex GBT傘下) | 米 |
| 出張予約 | ○ | ○(178か国以上) | ○(Expensify Travel) | ○ | ○ | ○ | ○(API提供) |
| 経費精算 | ○ | ○(Yokoy買収) | ◎(本体機能) | ○ | ○ | △ | × |
| 法人カード | ○(自社発行+既存カード接続) | ○(Perkカード) | ○(Expensify Card) | ◎(本体機能) | ◎(本体機能) | × | × |
| 公表料金 | Business:300名以下は無料/Expense は6人目以降 $15・人月。Enterprise は個別見積 | 非公開 | Collect $5・人月/Control $9・人月 | 非公開 | Free $0/Plus $15・人月/Enterprise 個別 | 非公開 | 非公開(API課金) |
| AIエージェント | Navan Edge(AI旅行アシスタント) | MCP対応で外部AIから操作可 | AIによる自動仕訳・違反検知 | AIによる承認・経費処理の自動化 | Policy Agent が全経費を自動レビュー+AP向け4エージェント | Egencia AI(会話型アシスタント) | ― |
| 日本法人での利用 | 日本語対応の公式情報を確認できず | 日本語ローカライズの記載なし | 日本語UIあり/出張の国内在庫は要確認 | 不可(非米国登記法人はアカウント開設不可) | 不可(米国登記法人+EINが必要) | 可(日本旅行とのJVが国内窓口) | 要問い合わせ |
| 規模・特記 | G2で4.7/5(9,000件超) | Yokoy・AmTrav を買収、約1,800名 | 1,500万メンバー、会計ソフト45種以上と連携 | 35,000社超。2026年にCapital Oneが買収 | 70,000社超。200か国以上で利用可 | Amex GBTが2021年にExpediaから取得 | TMCの下に敷く基盤 |
※料金・機能は2026年9月時点で各社が公開している情報にもとづきます。非公開のものは個別見積です。
各サービスの中身
① Navan(旧TripActions)
出張起点の統合型の代表格です。2021年にTripActionsから改称。従業員は航空券・ホテル・レンタカーをアプリ上で予約し、その内容がそのまま経費データになります。
料金設計が特徴的で、従業員300名以下なら Navan Business が無料、経費機能も最初の5名までは無料、6人目以降が1人あたり月15ドルという構成です。300名を超えると個別見積の Navan Enterprise に移ります。
日本企業にとって重要なのは Navan Connect という仕組みです。Navanの法人カードを発行しなくても、既存の Visa・Mastercard・American Express を接続して同じ体験が得られます。自社でカードを作り直せない企業でも導入の余地がある設計ですが、日本語UIや国内航空券(ANA・JAL)の在庫の扱いについては公式情報を確認できませんでした。検討する場合は直接照会が必要です。
② Perk(旧TravelPerk)
2025年11月4日に TravelPerk から Perk へ改称しました。ロンドン本社、従業員約1,800名。178か国以上で航空券・ホテル・鉄道・レンタカーを扱います。
改称の前後で、経費管理の Yokoy(スイス)と米国のTMC AmTrav を買収しており、出張とスペンド管理を一体で売る体制に移りました。
技術面で目を引くのは MCP(Model Context Protocol)対応です。外部のAIアシスタントから「レポートを出す」「経費を承認する」「出張の情報を取る」といった操作ができると案内しており、AIエージェントから叩かれる側のインターフェースを整えにいっています。この発想を持っているBTMは、国内にはまだありません。
ローカライズはカナダ・英国・ドイツ・スイス・スペイン・フランス・オランダ・イタリア向けが案内されており、日本語の記載はありません。
③ Expensify
経費精算が本体で、出張とカードは後から足された構成です。7社のなかで最も料金が明快で、Collect が1メンバーあたり月5ドル、Control が月9ドル。2025年4月に料金体系を簡素化し、年間契約やカード利用の有無による割引の網を取り払っています。
強みは既存カードをそのまま使えること(BYOC)で、世界10,000以上の銀行の法人カードを接続できます。カードを切り替えずに経費側だけ入れ替えたい企業に向きます。日本語UIがあり、7社のなかでは日本から試しやすい部類ですが、国内出張の在庫や日本の会計ソフトとの連携は別途確認が必要です。
④ Brex
法人カード・経費・出張・バンキング・請求書支払いを揃えた統合型で、35,000社超が利用。120か国以上で利用できるとしています。
2026年に大きく動きました。Capital One が51.5億ドルでBrexを買収すると2026年1月22日に発表し、4月7日に完了しています。 Discover との統合を済ませたCapital Oneが、決済ネットワークと大規模な法人カード事業に加えて、AIネイティブの支出管理プラットフォームまで持つ形になりました。買収時点で製品・価格・サポートの変更は発表されていませんが、独立系ベンダーとして評価していた企業は前提が変わった点を踏まえる必要があります。
なお Brexは非米国登記法人にはアカウントを開設できません。日本法人単独での利用は不可で、米国子会社を持つ企業が対象になります。
⑤ Ramp
法人カードと支出管理から入り、経費・請求書支払い・出張・調達まで広げたプラットフォーム。70,000社超が利用し、200か国以上で決済可能、33か国でカードのローカル発行、40通貨以上での精算に対応しています。
AIエージェントの実装が7社のなかで最も具体的です。Policy Agent が提出された経費の100%を自動レビューし、例外だけを人に上げる。請求書支払いには自動仕訳・不正検知・承認ルーティング・支払スケジューリングの4つのエージェントが立っています。出張ではホテル料金を監視し、50ドル以上下がったら自動で予約を取り直すという動きまでします。
料金は Free(0ドル)、Plus(1人あたり月15ドル+プラットフォーム料)、Enterprise(個別)。ただし利用には米国登記法人とEINが必要で、日本法人単独では開設できません。
⑥ Egencia(Amex GBT)
7社のなかで唯一、日本企業が現実的に契約できる選択肢です。Egenciaは2021年にAmex GBTがExpediaから取得したもので、Amex GBTは日本において株式会社日本旅行・グローバルビジネストラベル(2001年設立、アメリカン・エキスプレスと日本旅行の合弁)という窓口を持っています。
性格としては従来型TMCの進化系で、旅行会社としての実務とサポート網の上にテクノロジーを載せた作りです。最近はEgencia AIという会話型のアシスタントを投入し、依頼・予約・変更を1つの会話で完結させる方向に動いています。
統合型の各社と比べると経費側は薄く、精算はConcurなど別システムと組み合わせる前提になります。
⑦ Spotnana
これだけ性格が異なり、エンドユーザー向けの製品ではありません。クラウドネイティブな旅行インフラをAPIとして提供し、他社のTMCやサービスの裏側に敷かれる基盤層です。「Egenciaの代わりに選ぶもの」ではなく「Egenciaのような製品を作るための土台」と捉えるのが正確です。
自社で出張手配の仕組みを組む構想があるとき、あるいは既存BTMの裏側に何があるかを理解したいときに名前が出てきます。
共通する動きは「AIエージェント化」
7社を並べて見えるのは、競争の焦点が予約画面の使いやすさから、AIがどこまで代わりに処理するかへ移っていることです。
- Ramp:Policy Agent が全経費を自動レビューし、例外だけ人に上げる。ホテル料金の下落を検知して自動リブック
- Perk:MCP対応で、外部のAIアシスタントから予約・承認・レポート出力を操作できる
- Navan:Navan Edge が予約を担い、必要に応じて24時間の人的サポートに引き継ぐ
- Egencia:会話型の Egencia AI で、依頼から予約・変更までを1つの会話に収める
方向性は共通しています。人が画面を操作する回数を減らし、ポリシー判定と定型処理をエージェントに寄せる。人は例外だけを見る。 これは購買領域で起きていることと同じ構図で、間接材調達で何が起きているかは海外の自律型ソーシング6選の記事で扱っています。
日本企業がそのまま使えない4つの理由
理由1:法人カード一体型が前提になっている
統合型の経済性は、カードのインターチェンジ収益が支えています。だから無料プランやキャッシュバックが成立する。裏を返すと、カードを発行できない相手には売りにくい構造で、BrexとRampが米国登記法人を要件にしているのはこのためです。日本法人単独では土俵に乗れません。
理由2:日本語UIと国内在庫の壁
Perkは日本語ローカライズを案内しておらず、Navanも日本語対応の公式情報を確認できませんでした。加えて、ANA・JALの国内線や日本のビジネスホテルの在庫をどこまで押さえられるかは、海外サービスにとって構造的に弱い部分です。海外出張が中心の企業でなければ、実用にならない可能性があります。
理由3:請求書払いと立替の商習慣
海外の統合型は「法人カードで払う→精算が発生しない」という前提で作られています。日本は請求書払い(掛け)と従業員の立替が依然として主流で、前提がずれています。カードに寄せられない支出が残る限り、精算工程はなくなりません。
理由4:承認の粒度が違う
海外のサービスはポリシーで事前に枠を決め、枠内なら承認なしで実行という設計です。日本の稟議は金額帯ごとの多段階承認が前提で、「誰が承認したか」を個別に残す必要があります。ポリシー自動判定だけでは社内規程を満たせないケースが出てきます。この論点はSAP Concurの記事でも触れています。
出張の承認と手配を分断させないなら
海外勢が到達している状態を一言でいえば、予約・決済・経費計上が1回の操作で終わるということです。日本で同じ状態を作ろうとしたとき、障害になるのはツールの機能差ではなく、承認と手配が別々の工程に分かれているという構造のほうです。
承認が下りてから担当者が手配サイトを開き直すと、その間に在庫と価格が動きます。金額が変われば再申請になり、承認がもう一巡する。この往復が、国内で出張管理が重くなる最大の原因です。実際の発生パターンは出張申請の手動再予約はなぜ多発するのかの記事で整理しています。
1Approvalは、在庫を仮押さえしたうえで総額つきの事前承認を取り、承認ボタンを押した時点で手配が確定する流れを取ります。承認後に予約し直す工程がないため、金額のズレによる再申請が発生しません。手配データはそのまま経費データになり、法人一括請求にまとめられるため、従業員の立替精算そのものが不要になります。海外の統合型が法人カードで実現していることを、日本の請求書払いの商習慣のまま実現する設計です。1Approval 出張の詳細を見るから仕組みを確認してみてください。
よくある質問(FAQ)
Navanは日本で使えますか?
日本語UIの提供や国内航空券の在庫の扱いについて、公式に確認できる情報がありませんでした(2026年9月時点)。海外出張が中心で英語運用が可能な企業であれば検討の余地はありますが、国内出張が主体の場合は国内BTMのほうが現実的です。導入を検討する際は、日本語対応・ANA/JALの在庫・日本の会計ソフトとの連携の3点を直接照会してください。
BrexやRampは日本法人で契約できますか?
できません。Brexは非米国登記法人にはアカウントを開設できず、Rampも米国登記法人とEINを要件としています。米国子会社を持つ企業がその子会社で使う、という形が現実的な選択肢になります。
海外BTMのうち、日本企業が現実的に検討できるのはどれですか?
7社のなかではEgencia(Amex GBT)です。Amex GBTは日本において株式会社日本旅行・グローバルビジネストラベルという窓口を持っており、日本語での対応と国内の実務サポートが期待できます。ただし経費側は薄いため、精算は別システムと組み合わせる前提になります。
TravelPerkとPerkは別のサービスですか?
同じサービスです。2025年11月4日にTravelPerkからPerkへ社名・サービス名を変更しました。あわせて経費管理のYokoyと米TMCのAmTravを買収しており、出張単体ではなく出張+スペンド管理を一体で提供する体制に移っています。
なぜ海外は出張・経費・カードが1つになっているのですか?
法人カードのインターチェンジ収益がプラットフォーム全体の経済性を支えているためです。カード決済を自社に集めるほど収益が立つので、予約から精算までを1つに囲い込む動機が働きます。無料プランや高いキャッシュバックが成立するのもこの構造によるものです。逆に、カード決済に寄せられない支出が多い環境ではこのモデルは効きにくくなります。
Capital OneによるBrex買収で何が変わりますか?
2026年4月7日の買収完了時点で、製品・価格・サポート体制の変更は発表されていません。共同創業者のPedro Franceschi氏が引き続きBrexを率いるとされています。ただし、独立系のスタートアップであることを評価して選んでいた場合は前提が変わるため、契約更新のタイミングで方針を確認しておくことをおすすめします。
主な参照先
監修
伏見 匡矩
株式会社エイチ 代表取締役社長
- 国内旅行業務取扱管理者
株式会社エイチ代表取締役社長。出張手配・会場手配の実務を起点に、申請・承認から購買実行までを一体で扱う1Approvalを立ち上げ、事業責任者としてプロダクト設計に携わる。国内旅行業務取扱管理者。出張手配の実務とBTM各社の比較検証を踏まえ、承認・予約・精算をつなぐ設計を扱っている。
経歴・運営者情報を見るこの記事のテーマ
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