SAP Concurとは?3製品の機能・料金・注意点
SAP Concurの3製品(Expense・Travel・Invoice)でできることを整理し、料金の考え方、導入に数か月かかる理由、TMC契約が前提になる点まで解説。向いている企業・向いていない企業の判断軸もまとめました。
出張や経費精算の効率化を検討すると、必ずと言っていいほど候補に挙がるのがSAP Concur(コンカー)です。一方で「大企業向けと聞くが自社に合うのか」「結局いくらかかるのか」「導入にどのくらい時間がかかるのか」といった実務的な疑問は、公式サイトを読んでも分かりにくいのが実情です。本記事では、Concurの3製品それぞれで何ができるのかを整理したうえで、料金の考え方、導入プロジェクトでつまずきやすいポイント、そして向いている企業・向いていない企業の判断軸までを解説します。
この記事の要点
- SAP Concurは、SAP傘下のコンカー社が提供する経費精算・出張管理・請求書管理のクラウドサービス。3製品で構成され、それぞれ単独でも導入できる。
- 料金は公開価格ではなく個別見積もりが基本。
- 高機能である反面、導入プロジェクトとしての難易度は低くなく、事前に押さえるべき注意点が4つある。
- 経費精算システムが効率化するのは「立替精算というプロセスそのもの」ではなく「立替精算の手続き」である点に注意が必要。
- 内部統制やグローバル対応が求められる企業にとっては有力な選択肢。まず自社の要件を棚卸ししてから比較検討する。
- グローバル対応で比較する場合は、海外BTM・経費管理7社比較もあわせて確認してください。
SAP Concur(コンカー)とは?
SAP Concurは、ドイツのソフトウェア大手SAP傘下のコンカー社が提供する、経費精算・出張管理・請求書管理のクラウドサービスです。日本国内では株式会社コンカーが提供しており、経費精算クラウドの分野で長年にわたり高いシェアを持つ製品として知られています。
最大の特徴は、「経費精算だけのツール」ではなく、出張手配や請求書処理まで含めた支出管理全体(Spend Management)のプラットフォームである点です。出張を予約した時点のデータが精算時に引き継がれ、支払いまで一気通貫で追跡できるという設計思想を持っています。
「経費精算システム」と一括りにできない理由
国内には経費精算に特化したクラウドサービスが数多くありますが、Concurはそれらと比較対象がずれる場面があります。純粋な精算機能の使いやすさだけで比較すると割高に見える一方、多通貨・多言語対応、グローバル拠点を含めた統一ポリシーの適用、監査証跡の一元管理といった領域まで含めると、代替になる製品は限られます。自社が求めているのが「精算の手間削減」なのか「グローバルを含めた支出統制」なのかによって、評価が大きく変わる製品だといえます。
Concurの3製品で何ができるのか?
Concurは大きく3つの製品で構成されており、それぞれ単独でも導入できます。
Concur Expense(経費精算・管理)
従業員が立て替えた経費や法人カードの利用分を申請・承認・精算するための中核製品です。スマートフォンのカメラで領収書を撮影してデータ化し、申請内容と突き合わせる運用が基本になります。法人カードの利用明細や交通系ICカードの履歴を自動で取り込めるため、手入力そのものを減らす方向に設計されている点が特徴です。
加えて、旅費規程で定めた上限額や対象外費目に抵触する申請に自動でアラートを出す機能があり、承認者が一件ずつ目視でチェックする負担を軽減できます。
Concur Travel(出張手配・管理)
航空券・宿泊・鉄道といった出張手配を、規程に沿った形で予約するための製品です。予約した内容はConcur Expense側に連携されるため、精算時に改めて旅程を入力し直す必要がありません。
また、出張者が「いつどこにいるか」をデータとして把握できるため、災害や渡航先でのトラブル時に安否確認を行う安全配慮義務(Duty of Care)の観点からも活用されています。ただし後述するように、Concur Travelを利用するには旅行管理会社(TMC)との契約が前提になる点に注意が必要です。
Concur Invoice(請求書・支払管理)
取引先から届く請求書を取り込み、支払承認のフローを電子化する製品です。紙やPDFで届いた請求書をデータ化し、購買依頼や発注情報と突き合わせたうえで支払処理に進める流れを作れます。インボイス制度への対応も含め、経理部門の請求書処理業務を対象とする製品です。
経費精算(従業員が使ったお金)と請求書支払(取引先へ払うお金)を同じ基盤で管理できることが、支出全体を可視化するうえでの強みになります。
SAP Concurの料金はいくら?
Concurの料金は公開価格ではなく、個別見積もりが基本です。一般的には、導入する製品の組み合わせ、利用ユーザー数、月間の申請件数、必要な連携やカスタマイズの範囲によって変動します。
費用を検討する際は、ライセンス費用だけでなく次の3つを合わせて見積もる必要があります。
- 初期導入費用:要件定義、規程のシステムへの反映、会計システムとの連携設定にかかる費用
- 運用費用:月額・年額のライセンス費用に加え、社内問い合わせ対応や設定変更を担う担当者の工数
- 周辺の契約費用:Concur Travelを使う場合のTMC契約、法人カードの年会費など
国内向けの経費精算クラウドと比較すると費用水準は高くなる傾向があり、「精算フローがシンプルで申請件数もそれほど多くない」企業では、投資に見合う効果を出しにくい場合があります。
導入前に何を押さえておくべきか?(4つの注意点)
Concurは高機能である反面、導入プロジェクトとしての難易度は決して低くありません。事前に知っておきたい注意点を4つ挙げます。
1. 稼働までに数か月単位の準備期間がかかる
Concur導入の実態は「システムの設定作業」というより「自社の経費規程・承認権限を棚卸しし、明文化し直す作業」です。これまで担当者の裁量で運用していた例外的な取り扱いをどう扱うか、承認権限を誰に持たせるかといった論点が社内で決まらないと、設定作業そのものが前に進みません。この意思決定に時間がかかるため、稼働まで数か月を要するケースが一般的です。
2. Concur Travelの利用にはTMC(旅行管理会社)との契約が前提になる
Concur Travelは、それ単体で航空券や宿泊を仕入れて販売する仕組みではなく、旅行管理会社(TMC)が提供する予約コンテンツを扱うためのプラットフォームです。そのため、Concur Travelを使うには別途TMCとの契約が必要になります。TMC側にも取扱ボリュームの条件があるため、年間の出張件数が少ない企業では契約条件が折り合わないことがあります。
3. 設定・運用に一定の専門知識が求められる
多様な要件に対応できる分、設定項目は多岐にわたります。運用開始後も、組織改編に伴う承認ルートの変更、規程改定の反映といったメンテナンスが発生するため、社内に設定を理解した担当者を置くか、パートナー企業の支援を受ける体制が必要になります。「導入して終わり」にならない点は、あらかじめ見込んでおくべきコストです。
4. 機能を使い切れないと費用対効果が出にくい
多通貨対応、グローバル拠点の統一ポリシー、複雑な承認階層といった機能は、それを必要とする企業にとっては強力ですが、必要としない企業にとっては使わない機能に費用を払うことになります。自社の要件を洗い出したうえで、「Concurでなければ実現できない要件がいくつあるか」を確認しておくことが重要です。実際にどの程度の削減が出ているかは、次節で公開事例をもとに整理します。
導入企業は実際に何を削減しているのか
料金と注意点だけでは投資判断ができないため、公開されている導入事例から効果の出方を確認しておきます。以下はいずれもコンカーが公開している導入事例集(2025年版・2026年版)に記載された、各社インタビュー時点の数値です。
| 企業 | 規模 | 公表されている効果 |
|---|---|---|
| 石垣 | 1,026名(グループ合計) | 出張旅費精算が1申請34分→16.7分。ROI 158%、投資費用を2年で回収 |
| エイチ・ツー・オー リテイリング | グループ50社・約2万5千名 | 立替精算 38.5分→14.5分、請求書処理 27分→12.5分。約3,000人で年間1万4,400時間の削減 |
| 味の素フィナンシャル・ソリューションズ | グループ9社 | 請求書処理が1件約20分→5分(1/4) |
| オルバヘルスケアHD | グループ7社・57拠点 | 経理部門の処理時間を1,685時間削減(当初想定800時間の2倍超) |
| アットホーム | 1,792名 | 月間約1万枚の駐車場代領収書の処理が月100時間→50時間 |
| 学研プロダクツサポート | 315名 | 外部委託していたチェック業務を約40%削減 |
読み取れる傾向は3つあります。
効果は「件数×1件あたりの短縮時間」で決まる
上の数値はいずれも、1件あたりの短縮幅そのものは10〜20分程度です。大きな削減額になっているのは、件数が多いからです。裏を返せば、申請件数が少ない組織では同じ導入をしても金額に表れません。
自社の投資判断を行うときは、まず月間の申請件数を数えてください。件数×短縮見込み時間×時間単価が、年間の削減額の上限になります。これが導入・運用コストを上回らなければ、機能の優劣を比べる前に判断がつきます。
法改正への対応コストが判断材料になることがある
石垣のケースでは、既存システムのままインボイス制度に対応した場合に出張旅費精算が1申請あたり約50分増加し、年間コストが約2,000万円増えるという試算が出たことが、ゼロベースでの検討に転じたきっかけになっています。
現行システムを維持する場合のコストを見積もらないまま比較すると、「新規導入の費用」だけが目立ちます。据え置いた場合に増える工数も並べて比較してください。
使い切らないと回収できない
石垣の担当者は「費用は安くはないが、だからこそ導入した機能をすべて使い倒すことが重要」と述べています。同社はペーパーレス(領収書の紙運用を撤廃)、入力レス(全員に法人カードを配布して自動連携)、承認レス(旅費規程を改定し承認ステップを削減)の3つを目標として設定し、いずれも実行したうえで回収に至っています。
前節の「機能を使い切れないと費用対効果が出にくい」は、裏返すと規程の改定まで踏み込めるかどうかの話です。システムを入れるだけで既存の運用を変えないなら、削減幅は限定的になります。
SAP Concurはどんな企業に向いているのか?
ここまでの内容を踏まえると、判断軸は次のように整理できます。
向いている企業
- 上場企業・上場準備中の企業:内部統制の観点から、申請から支払いまでの証跡を一元的に説明できる状態が求められる
- 海外拠点を持つグローバル企業:多通貨・多言語対応と、拠点をまたいだ統一ポリシーの適用が必要になる
- 従業員数・申請件数が多い企業:自動化による削減効果が件数に比例するため、投資回収の見通しが立ちやすい
慎重に検討すべき企業
- 申請件数が限定的で、精算フローもシンプルな企業:機能を使い切れず、費用対効果が出にくい
- 出張件数が少なくTMC契約が難しい企業:Concur Travelまで含めた一気通貫の効果を得にくい
- 情シス・経理に設定を担える人員を確保しにくい企業:導入後のメンテナンスが滞り、規程とシステムの実態が乖離するリスクがある
「精算をラクにする」だけでは何が残るのか?
ここで一度立ち止まって考えたいのが、経費精算システムが効率化するのは「立替精算というプロセスそのもの」ではなく「立替精算の手続き」だという点です。
領収書の撮影が簡単になっても、規程違反が自動で検知されても、「社員が一度自分のお金で払い、後から会社が返す」という構造自体は残り続けます。この構造が残る限り、領収書の紛失や提出漏れ、申請忘れ、月末の振込処理といった業務はゼロにはなりません。
立替そのものをなくすというアプローチ
これに対して、申請・承認の時点で法人決済につなぎ、そもそも社員が立て替えない状態をつくるというアプローチがあります。1Approvalはこの考え方に立っており、承認ボタンを押した時点で購買が実行される仕組みによって、立替精算を前提としない業務フローを構築できます。
購買・出張データは実行された時点で経費データとして自動生成され、会計・経費精算システムと連携できるため、支出の記録自体は既存の基盤に残せます。また、複数サービス・複数取引先の利用料を月1回の法人一括請求にまとめられるため、取引先ごとに届く請求書を突き合わせる作業も減らせます。
さらに、事前承認時(カートからの転記時点)の価格と、実際の承認・購買実行時点の価格に差が生じた場合でも、あらかじめ価格上昇の許容範囲を設定しておくことで、差し戻しなしに購買を進められる「ダイナミック・ポリシー」により、承認から購買完了までのリードタイム短縮にもつながります。
役割分担で考える
重要なのは、どちらか一方を選ぶという発想ではなく、「精算基盤として何を使い、購買実行と法人決済をどこが担うか」を役割分担で設計することです。既存の経費精算システムを活かしながら、立替が発生しやすい領域だけを購買側で吸収するという組み立て方もできます。自社の支出のうち、どこまでが立替をなくせる領域なのかを整理したい方は、1Approval 出張・トラベルの詳細を見るから具体的な仕組みを確認してみてください。
手配側のサービスを含めて比較検討する場合は、法人出張管理BTM13社比較|選び方の6つの視点で3つのタイプ別に整理しています。
精算そのものを減らす方向の打ち手としては、支払先を束ねて法人一括請求に寄せる方法があります。会議・イベント領域での考え方はMICE運営の経費精算が煩雑になる理由と請求一本化の方法が参考になります。
よくある質問(FAQ)
SAP Concurの料金はいくらですか?
公開価格は設定されておらず、個別見積もりとなります。導入する製品(Expense/Travel/Invoice)の組み合わせ、ユーザー数、申請件数、必要な連携範囲によって変動するため、要件を整理したうえで問い合わせる必要があります。
Concurは中小企業でも導入できますか?
導入自体は可能ですが、費用水準と設定・運用にかかる工数を考えると、申請件数が限定的な企業では投資に見合う効果を出しにくい場合があります。特にConcur TravelはTMCとの契約が前提となるため、出張件数が少ない企業では条件が折り合わないことがあります。
3製品のうち1つだけ導入することはできますか?
はい、Concur Expenseのみ、Concur Invoiceのみといった単独導入も可能です。まず経費精算から始め、効果を確認してから範囲を広げていく進め方が一般的です。
導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
企業規模や要件の複雑さによりますが、数か月単位の準備期間を見込むのが一般的です。期間の大半はシステム設定そのものではなく、経費規程・承認権限の棚卸しと社内合意形成に費やされます。
経費精算システムを入れれば立替精算はなくなりますか?
いいえ、経費精算システムが効率化するのは申請・承認・精算の「手続き」であり、社員が立て替えて後から精算するという構造自体は残ります。立替をなくすには、申請・承認の段階で法人決済につなぐ仕組みを別途検討する必要があります。
まとめ:自社の要件を棚卸ししてから比較検討する
SAP Concurは、経費・出張・請求書を統合的に管理できる完成度の高いプラットフォームであり、内部統制やグローバル対応が求められる企業にとっては有力な選択肢です。一方で、導入には数か月の準備期間と一定の運用体制が必要であり、機能を使い切れるかどうかで費用対効果が大きく変わります。
比較検討の第一歩は、製品カタログを読み比べることではなく、自社の経費規程・承認権限・申請件数を棚卸しすることです。そのうえで「精算手続きの効率化」で足りるのか、それとも「立替そのものをなくす」ところまで踏み込むべきなのかを見極めると、必要なシステム像がはっきりしてきます。
監修
伏見 匡矩
株式会社エイチ 代表取締役社長
- 国内旅行業務取扱管理者
株式会社エイチ代表取締役社長。出張手配・会場手配の実務を起点に、申請・承認から購買実行までを一体で扱う1Approvalを立ち上げ、事業責任者としてプロダクト設計に携わる。国内旅行業務取扱管理者。出張手配の実務とBTM各社の比較検証を踏まえ、承認・予約・精算をつなぐ設計を扱っている。
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