少額減価償却資産とは|10万・20万・40万の境目
少額減価償却資産の基準は3つあります。10万円未満は法人税法施行令133条で全額損金、20万円未満は同133条の2の一括償却資産で36か月の月割、そして中小企業者等の特例は租税特別措置法67条の5で、令和8年4月1日以後の取得分から30万円未満が40万円未満に引き上げられ、対象外となる法人も従業員500人超から400人超に変わりました。社内の稟議金額基準との違いまで一次資料で確認します。
「備品はいくらから資産計上ですか」という質問には、答えが3つあります。 10万円、20万円、そして40万円です。どれが正解かではなく、どの制度を使うかで変わります。
そしてもうひとつ、いま検索して出てくる情報の多くが古くなっています。 いちばん上の基準は長く30万円でしたが、令和8年4月1日以後に取得等をするぶんから40万円に引き上げられました。対象になる法人の範囲も同時に狭まっています。
この記事では、3つの区分を条文で確認し、どれを選ぶと何が起きるかを整理します。そのうえで、混同されやすい社内の稟議金額基準との違いにも触れます。
この記事の要点
- 基準は3つあります。10万円未満(法人税法施行令133条)、20万円未満(同133条の2)、40万円未満(租税特別措置法67条の5)です。
- 10万円未満は、事業の用に供した日の属する事業年度で損金経理すれば全額が損金になります。使用可能期間が1年未満のものも同じ扱いです。
- 20万円未満は一括償却資産としてまとめられます。損金算入限度額は「一括償却対象額を36で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」で、実質3年の均等償却です。
- 40万円未満は中小企業者等の特例です。青色申告であることが要件で、年300万円が上限です。
- この40万円は令和8年4月1日以後に取得等をするぶんからです。それ以前は30万円未満でした。あわせて、対象外となる法人が従業員500人超から400人超に変わっています。
- 判定は取得等をする日で行います。施行日をまたぐ事業年度には経過措置があります。
- 10万円未満のものは、40万円の特例の対象から除かれます。 下の区分が先に効きます。
- 社内の稟議金額基準とは別の物差しです。稟議の金額は「誰が決めてよいか」、この3区分は「どう費用にするか」を決めます。
10万円未満|全額を損金にできる
法人税法施行令133条が定めています。
内国法人がその事業の用に供した減価償却資産(中略)で、取得価額(中略)が十万円未満であるもの(貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)又は前条第一号に規定する使用可能期間が一年未満であるものを有する場合において、その内国法人が当該資産の当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
読むべき点が4つあります。
| 条文の表現 | 実務での意味 |
|---|---|
| 事業の用に供した | 買った日ではなく、使い始めた日が基準。買って倉庫に置いたままなら、まだ対象にならない |
| 取得価額が十万円未満 | 10万円ちょうどは対象外。未満です |
| 使用可能期間が一年未満 | 金額にかかわらずこちらでも対象になる |
| 損金経理をしたとき | 自社の帳簿で費用に落としていることが条件。申告書だけで処理はできない |
貸付けの用に供したものは除かれます。 ただし「主要な事業として行われるもの」は除外の対象外、つまりリース業などを本業とする場合は従来どおりです。
20万円未満|一括償却資産として3年で
施行令133条の2です。10万円以上20万円未満のものをまとめて処理できます。
当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額(中略)に達するまでの金額とする。
「3年均等」と言われるのはこれです。 正確には36か月の月割なので、期中に取得しても月数で按分されます。
一括と呼ぶ理由
この制度は資産を1点ずつ追いかけません。 その事業年度に取得した対象資産の取得価額の合計(一括償却対象額)をひとつの固まりとして、3年にわたって費用化します。
実務上の意味が2つあります。
- 途中で捨てても、残りは償却し続けます。 個別の資産ではなく固まりなので、除却に応じて一度に落とすことはできません
- 個体管理の手間が減ります。 固定資産台帳に1点ずつ載せて追う必要がなくなります
備品の現物管理そのものについては物品管理・備品管理システム比較に整理しています。
40万円未満|中小企業者等の特例
租税特別措置法67条の5です。ここが今回変わった部分です。
国税庁の令和8年度改正の資料は、次のように説明しています。
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、令和8年4月1日以後に取得等(取得、製作又は建設をいいます。以下同じです。)をする減価償却資産の取得価額基準が30万円未満のものから40万円未満のものに引き上げられ、その適用期限が3年延長されました
また、同日以後に減価償却資産を取得等する場合において、本制度の対象となる法人から常時使用する従業員数が400人を超える法人が除外されました
なお、本制度の対象となる取得価額の合計額については、引き続き年300万円が上限とされています
何が変わって、何が変わらなかったか
| 令和8年3月31日以前の取得等 | 令和8年4月1日以後の取得等 | |
|---|---|---|
| 取得価額の基準 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 対象外となる法人 | 常時使用する従業員500人超 | 400人超 |
| 年間の上限 | 300万円 | 300万円(据え置き) |
判定は「取得等をする日」で行います。 事業年度ではありません。施行日をまたぐ事業年度には経過措置が設けられています。
要件
条文は対象を「中小企業者等」とし、青色申告書を提出するものに限っています。そのうえで、年間の合計額について次のように定めています。
当該中小企業者等の当該事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が三百万円(当該事業年度が一年に満たない場合には、三百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額。以下この項において同じ。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち三百万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額を限度とする。
事業年度が1年未満なら、300万円も月割になります。設立初年度や決算期変更の年は注意が要ります。
10万円未満のものは含まれない
条文は対象から「その取得価額が十万円未満であるもの」を除いています。10万円未満は施行令133条で全額落とせるので、300万円の枠を使う必要がありません。 枠を無駄に消費しないよう、区分を分けて集計してください。
※適用期限と要件は税制改正で変わります。自社の事業年度への当てはめは、顧問税理士または国税庁の最新資料でご確認ください。
どれを選ぶかの順序
金額だけで機械的に決まるわけではありません。選択できる場面があります。
| 取得価額 | 選べるもの |
|---|---|
| 10万円未満 | 全額損金(133条) |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産(133条の2)/ 特例(67条の5)/ 通常の減価償却 |
| 20万円以上40万円未満 | 特例(67条の5)/ 通常の減価償却 |
| 40万円以上 | 通常の減価償却 |
10万円以上20万円未満は、いちばん選択肢が多い帯です。 判断材料は2つあります。
- 300万円の枠に余裕があるか — 特例を使えば全額をその期に落とせますが、枠を消費します
- その期に利益が出ているか — 落としたい期と、3年に分けたい期では答えが変わります
枠が足りなくなるのは期末です。 期首から順に使っていくと、本当に落としたい高額のものが入らなくなることがあります。
稟議の金額基準とは、別の物差し
ここが現場でいちばん混乱する点です。
| 何を決めるか | 根拠 | |
|---|---|---|
| 稟議の金額基準 | 誰が決めてよいか | 社内の職務権限規程 |
| 資産計上の基準 | どう費用にするか | 税法 |
揃える義務はありません。 「10万円以上は部長決裁」と「10万円以上は資産計上」を一致させている会社もありますが、法令上そうしなければならないわけではありません。
ただし、揃っていないと現場が迷います。 「15万円のモニターは課長決裁でよいが、経理では一括償却資産になる」という状態は、申請する側から見ると基準が2つあるように見えます。社内の説明では、どちらの話をしているかを明示してください。
稟議の金額基準の決め方は職務権限規程の作り方、備品購入の稟議そのものは備品購入の稟議はいくらから?に整理しています。
申請の時点で区分が決まるようにする
経理が後から仕分けると、取得日や事業供用日の確認に手間がかかります。申請の時点で必要な情報が揃っていれば、後工程が速くなります。
| 申請に入れておくこと | なぜ必要か |
|---|---|
| 取得価額(税抜・税込の別) | 区分の判定そのもの。経理方式で境目が変わる |
| 取得等をする日の見込み | 40万円か30万円かの判定が、この日で決まる |
| 事業供用の予定日 | 損金算入できる事業年度を決める |
| 品目と用途 | 使用可能期間1年未満に当たるかの判断材料 |
| 数量 | 1点あたりで判定するため、まとめ買いの単価が要る |
取得価額が税抜か税込かで区分が変わります。 消費税の経理方式が税抜なら税抜価額、税込なら税込価額で判定します。39万円の機器は、税込だと40万円を超えます。
承認後に発注日が動くと、判定の前提も動きます。三点照合で扱ったとおり、発注・検収・請求の記録が揃っていれば、取得日の確認もその中で済みます。
よくある質問(FAQ)
10万円ちょうどは対象になりますか?
なりません。条文は「十万円未満」です。20万円、40万円も同じく「未満」で、ちょうどの金額は上の区分になります。
税抜と税込、どちらで判定しますか?
自社が採用している消費税の経理方式によります。税抜経理なら税抜価額、税込経理なら税込価額で判定します。境目の金額では結論が変わるので、申請フォームに税抜・税込の別を入れておくことをおすすめします。
30万円ではないのですか?
令和8年4月1日以後に取得等をするぶんは40万円未満です。それ以前の取得は30万円未満でした。判定は取得等をする日で行うため、施行日前後の取得が混在する事業年度では両方が出てきます。
中小企業者等の特例は誰でも使えますか?
いいえ。青色申告書を提出していることが要件で、常時使用する従業員数が400人を超える法人は対象外です(令和8年4月1日以後の取得等の場合。それ以前は500人超)。
一括償却資産を途中で捨てたら、残りはどうなりますか?
一括償却資産は個々の資産ではなく、その事業年度に取得したものの合計を1つの固まりとして扱います。そのため、除却しても残りの期間にわたって償却を続けます。 個別に残額を落とすことはできません。
使用可能期間が1年未満なら、金額が大きくても全額落とせますか?
施行令133条は「取得価額が十万円未満であるもの又は前条第一号に規定する使用可能期間が一年未満であるもの」としています。金額とは別の要件として並んでいます。ただし使用可能期間の判定は実態によるため、個別には税理士にご確認ください。
買ったけれどまだ使っていない場合は?
条文は「事業の用に供した日の属する事業年度」としています。購入しただけで使い始めていないものは、その事業年度の損金にできません。期末の駆け込み購入で見落としやすい点です。
社内の稟議金額と資産計上の基準は合わせるべきですか?
合わせる義務はありません。ただし基準が2つあると現場が迷うため、申請の案内ではどちらの話かを明示してください。稟議の金額は職務権限規程で決めるもので、税法とは根拠が違います。
1Approvalでの実現方法
1Approvalは、いま使っている承認ワークフロー(Microsoft 365、Teams、Google Workspace、kintone)の上で、承認が降りた時点で発注や手配まで完了させる仕組みです。
区分の判定との関係はこうです。
| 判定が遅れる原因 | 1Approvalの扱い | |
|---|---|---|
| 取得価額が分からない | 申請に単価が入っていない | 申請の入口が1つで、発注内容がレコードに残る |
| 取得日が追えない | 発注が各自で分散している | 承認後に発注まで進むので日付が残る |
| 経理が後から照会する | 現場に聞いて回る | 発注と費用が同じ記録でつながる |
- 承認と発注の間が消える — 承認後に注文し直す工程がなくなります
- 申請の入口が1つになる — 何をどこで買うかに関わらず同じ場所から申請できます
- 費用が法人一括請求にまとまる — 従業員の立替と領収書の回収が発生しません
区分の判定そのものを代行するわけではありません。 判定に必要な取得価額と日付が、申請の記録として残る状態にする方向です。
まとめ
少額減価償却資産の基準は3つです。10万円未満は施行令133条で全額損金、20万円未満は同133条の2の一括償却資産で36か月の月割、40万円未満は措置法67条の5の中小企業者等の特例です。
いちばん重要なのは、40万円という数字が新しいことです。長く30万円でしたが、令和8年4月1日以後に取得等をするぶんから40万円未満に引き上げられました。同時に、対象外となる法人が従業員500人超から400人超に変わっています。年300万円の上限は据え置きです。判定は取得等をする日で行うため、施行日をまたぐ事業年度では両方の基準が出てきます。
10万円未満は特例の対象から除かれます。 下の区分が先に効くので、300万円の枠を無駄に使わないよう集計を分けてください。
そして、稟議の金額基準とは別の物差しです。稟議は「誰が決めてよいか」、この3区分は「どう費用にするか」を決めます。揃える義務はありませんが、揃っていないと現場が迷うので、案内ではどちらの話かを明示してください。
まず自社の申請フォームに、取得価額が税抜か税込かの別が入っているかを確認してください。 境目の金額では、ここで結論が変わります。
主な参照先
- 法人税法施行令(e-Gov法令検索)
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索)
- 令和8年度 法人税関係法令の改正の概要(国税庁)
- 令和8年度税制改正の大綱(財務省)
- 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措法67の5)の適用対象資産の範囲について(国税庁)
※本記事は2026年11月時点で確認した公開情報をもとに整理したものです。条文の引用はe-Gov法令検索、改正内容は国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」によります。e-Gov法令検索で配信されている条文には改正が反映されていない場合があります。 適用期限・金額基準・対象法人の範囲は税制改正で変わるため、自社の事業年度への当てはめは顧問税理士または国税庁の最新資料でご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の案件に対する税務上の助言ではありません。
監修
伏見 匡矩
株式会社エイチ 代表取締役社長
株式会社エイチ代表取締役社長。出張手配・会場手配の実務を起点に、申請・承認から購買実行までを一体で扱う1Approvalを立ち上げ、事業責任者としてプロダクト設計に携わる。消耗品・工具の購買から会場手配まで、現場の調達を代行してきた経験をもとに、立替精算と勝手購買が生まれる構造を扱っている。
経歴・運営者情報を見るこの記事のテーマ
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