ワークフローの種類|承認ルートと提供形態
ワークフローの種類は、承認ルートの型(直線型・条件分岐型・並列型・指名型)と、システムの提供形態(クラウド型・パッケージ型・内蔵機能・内製)という2つのレイヤーに分かれます。それぞれの使いどころと設計上の注意点を整理したうえで、「ワークフロー」という語が3つの意味で使われている点、扱う申請書の種類、BPMやRPAとの違いまでを扱います。
「ワークフローの種類」で探しているものは、たいてい2つのどちらかです。承認ルートをどう組むかの型か、システムの提供形態か。前者は設計の話、後者は製品選定の話で、必要な情報が違います。
本記事ではこの2つを順に整理し、そのうえで「ワークフロー」という語自体が複数の意味で使われている点まで扱います。
この記事の要点
- 承認ルートの型は4つ。直線型・条件分岐型・並列型(合議型)・指名型。多くの申請は直線型で足り、金額基準が入ると条件分岐型になります。
- 型を増やすほど運用は重くなります。まず全申請を直線型で置き、例外だけ分岐させるのが破綻しにくい順序です。
- 提供形態は4つ。クラウド型・パッケージ型(オンプレミス型)・既存システムの内蔵機能・内製。パッケージ型とオンプレミス型はほぼ同義です。
- 「ワークフロー」という語自体が、業務の手順/システムの承認機能/製品カテゴリの3つの意味で使われます。社内で話が噛み合わないときは、たいていここがずれています。
- 隣接する製品との違いは目的で分かれます。BPMは業務の改善、ワークフローは申請と承認の処理。
- 自分がどれを探しているかは、解きたい問題が「決められない」なのか「処理が遅い」なのかで見分けられます。
承認ルートの種類
まず設計側の分類です。どの製品を使っても、承認ルートはこの4つの組み合わせで表現されます。
| 型 | 動き | 使いどころ |
|---|---|---|
| 直線型 | 申請者から決裁者まで1本の順路で進む | 経費精算、備品購入など日常の申請。処理順が明確で迷いがない |
| 条件分岐型 | 金額や部門などの条件でルートが変わる | 金額基準のある稟議。10万円未満は課長決裁、以上は部長決裁など |
| 並列型(合議型) | 複数の承認者が同時に審査する | 契約締結、新規事業の立ち上げなど複数部門が関わる案件 |
| 指名型 | 申請者が承認者を選ぶ | 承認者が案件ごとに変わる業務。統制は弱くなる |
型を増やすほど運用は重くなる
4つの型を全部使える製品でも、最初から全部使う必要はありません。分岐と合議は、条件の定義とメンテナンスがそのまま運用の負担になります。
破綻しにくい順序は、まず全申請を直線型で置き、実際に例外が出た申請だけを条件分岐型へ移すことです。設計の段階で「将来こういう分岐があるかもしれない」と先回りして作ると、使われない分岐が残り、改編のたびに全部を見直すことになります。
並列型は誰か1人が止まると全体が止まる点に注意してください。全員承認と過半数承認のどちらにするかを、導入前に決めておく必要があります。
指名型は運用が楽な反面、申請者が承認者を選べるため統制としては弱くなります。監査で指摘を受けやすい形なので、使う範囲を限定してください。
承認ルートを個人アカウントで指定すると異動のたびに全ルートを直すことになります。この設計論点は承認者マスタの設計|組織改編で壊れない承認ルートで詳しく扱っています。
「ワークフロー」が指しているもの
ここからは製品選定側の話です。その前に、言葉の整理を1つ挟みます。
意味1:業務の手順そのもの
「受注から出荷までのワークフロー」のように、業務が流れる順序を指す使い方です。システムの話ではありません。この意味で使われているときの成果物は、フロー図や業務手順書になります。
社内で「ワークフローを見直そう」と言われた場合、この意味であることが少なくありません。システムを探し始める前に確認してください。
意味2:システムに組み込まれた承認機能
kintoneのプロセス管理、SharePointの承認、Salesforceの承認プロセスのように、業務システムの一部として持っている承認の仕組みを指す使い方です。「kintoneのワークフロー機能」という言い方がこれにあたります。
この場合、対象はそのシステムで扱っているデータに限られます。kintoneのプロセス管理はkintoneのレコードに対して動くもので、社内の全申請を横断するものではありません。
意味3:製品カテゴリとしてのワークフローシステム
稟議や各種申請の電子化を目的とした独立した製品を指す使い方です。「ワークフローシステムを比較する」と言うときはこれです。
3つのうちどれを指しているかで、次にやることが変わります。
| 指しているもの | 次にやること |
|---|---|
| 業務の手順 | 現状のフローを書き出し、無駄な工程を落とす |
| システムの承認機能 | いま使っているシステムの設定でどこまでできるかを確認する |
| 製品カテゴリ | 要件を出して製品を比較する |
提供形態による分類
製品カテゴリの話に絞ると、形態は4つに分かれます。
| 形態 | 中身 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| クラウド型 | ベンダーの環境を月額で使う | 大半の企業の既定。保守を持ちたくない |
| パッケージ型(オンプレミス型) | ライセンスを買い、自社サーバに置く | データ持ち出しの制約、独自カスタマイズ、保守体制の3つがそろう場合 |
| 既存システムの内蔵機能 | kintone・Microsoft 365・グループウェアの承認機能を使う | 申請の種類が少なく、ルートが固定的 |
| 内製 | Power AutomateやGASで自前で組む | 要件が特殊で、作る人と保守する人を確保できる |
「パッケージ型」という言い方は、オンプレミス型とほぼ同義で使われます。基本ライセンスは数十万円から数百万円と幅があり、加えてサーバの費用と保守費が続きます。クラウドとの総額比較のしかたはワークフローシステムの費用相場|総額の出し方で整理しています。
クラウド型に決めたあとで何を見るかはクラウド型ワークフローシステムの比較と選び方に、製品の3タイプ(専用型・グループウェア内蔵型・業務プラットフォーム型)による分類はワークフローシステム比較|3タイプの違いと選び方にまとめています。
扱う申請書の種類
どの申請書を載せるかで、必要な機能が変わります。
| 区分 | 代表的な申請書 | 効いてくる要件 |
|---|---|---|
| 意思決定 | 稟議書、投資決裁、契約締結 | 金額分岐、多段階承認、合議、証跡の保存年数 |
| 購買 | 備品購入、発注依頼、支払依頼 | 予算との突合、承認後の発注、検収 |
| 経費 | 出張申請、旅費精算、交際費 | 証憑の添付、規程との照合、会計への計上 |
| 人事・労務 | 休暇、時間外、異動、資格取得 | 人事マスタとの連携、労務規程との整合 |
| IT | アカウント払い出し、権限変更、端末貸与 | ID基盤との連携、棚卸 |
多くの会社は意思決定と購買から始めます。ここが最も紙とハンコが残りやすく、金額も大きいためです。
注意点として、経費と人事は専用製品のほうが強い領域です。経費精算システムや人事労務システムには、規程との照合や法改正への追随が組み込まれています。ワークフローシステムで全部を賄おうとすると、結局そこだけ作り込みが増えます。
隣接する製品との違い
混同されやすいものを整理します。
BPMとの違い
ワークフローは1つの業務の手順を電子化して回すもので、BPM(ビジネスプロセス管理)は複数の業務プロセスをつないで可視化し、継続的に改善するための手法とツールです。
BPMツールはワークフローの機能を含んだうえで、プロセスの設計、実行状況のモニタリング、ボトルネックの分析を持ちます。目的が「申請を処理すること」ならワークフロー、「業務そのものを作り直すこと」ならBPMです。
RPAとの違い
RPAは人がやっている画面操作を自動化するものです。承認そのものを扱うのではなく、承認の前後にある転記作業などを肩代わりします。ワークフローと競合するのではなく、隣に置かれます。
経費精算システムとの違い
経費精算システムは、証憑の読み取り、規程との照合、会計仕訳への変換までを含みます。承認機能も持っていますが、対象は経費に限られます。稟議や購買を含めて全社の申請を扱うならワークフローシステム、経費に絞るなら専用製品のほうが手間がかかりません。
電子契約との違い
電子契約は社外との契約書に対する署名の仕組みで、社内の承認を扱うものではありません。実務では、社内の稟議をワークフローで通してから、電子契約で先方と締結するという順につながります。
自分がどれを探しているかの見分け方
解きたい問題から逆算するのが早道です。
- 決められない、判断が止まる → 業務の手順の問題です。承認者の数、決裁権限の設定、判断基準の明文化を先に見てください。システムを入れても決まらないものは決まりません
- 処理が遅い、どこにあるか分からない → システムの問題です。ワークフローシステムまたは既存システムの承認機能が効きます
- 承認は済んでいるのに後工程が進まない → 承認の先の問題です。ワークフロー製品の範囲外なので、発注や精算の側を見てください
- 申請の種類が増えて管理しきれない → 製品を検討する段階です。内蔵機能や内製から移る時期にあたります
最初の項目は見落とされやすいところです。承認に時間がかかる原因が承認者の判断基準にあるなら、システムを入れても待ち時間は変わりません。承認遅延の原因と対策で、件数の問題と判断の問題を分けて整理しています。
よくある質問(FAQ)
承認ルートはどの型から始めるべきですか?
直線型です。全申請を直線型で置いてから、実際に例外が発生した申請だけを条件分岐型へ移してください。導入時点で将来の分岐を先回りして作り込むと、使われない分岐が残り、組織改編のたびに全部を見直す作業が発生します。
ワークフローとワークフローシステムは何が違いますか?
ワークフローは業務が流れる順序そのものを指す言葉で、ワークフローシステムはそれを電子化して回すための製品です。社内の会話では両方が「ワークフロー」と呼ばれるため、フロー図の話なのか製品の話なのかを確認してから進めると行き違いが減ります。
パッケージ型とオンプレミス型は違うものですか?
ほぼ同義です。ライセンスを購入して自社のサーバに導入する形をパッケージ型と呼び、そのサーバが自社内にあることを指してオンプレミス型と呼びます。文脈で使い分けられているだけで、指しているものは同じと考えて問題ありません。
既存のグループウェアの承認機能から製品に移る目安はありますか?
3つのうち2つが当てはまったら検討時期です。申請書の種類が10を超えた、金額や部門による承認ルートの分岐が必要になった、監査で過去の申請を横断して検索するよう求められた。1つだけなら、まだ内蔵機能の設定で吸収できることが多いです。
BPMツールを入れればワークフローは要りませんか?
機能としては包含します。ただしBPMツールは業務プロセスの設計と改善が目的なので、申請と承認だけを回したい場合は設定の負担が大きくなります。稟議の電子化が目的ならワークフローシステムのほうが早く立ち上がります。
すべての申請を1つのシステムにまとめるべきですか?
まとめられるところまでで構いません。経費精算と人事労務は専用製品のほうが法改正への追随が強いため、その2つを外して、稟議・購買・IT申請をワークフローシステムに載せる構成が現実的です。承認者から見て入口が2〜3か所に収まっていれば運用は回ります。
1Approvalでの実現方法
1Approvalは、いま使っている承認ワークフロー(kintone、Microsoft 365、Teams、Google Workspace)の上で、承認が降りた時点で発注や手配まで完了させる仕組みです。
見分け方の3つ目、つまり「承認は済んでいるのに後工程が進まない」に対応する位置にあります。
- 承認と発注の間が消える — 承認後に誰かが購買サイトを開いて注文し直す工程がなくなります
- 申請の入口が1つになる — 何をどこで買うかに関わらず同じ場所から申請できます
- 費用が法人一括請求にまとまる — 立替精算と証憑の回収が発生しません
- 既存の承認機能をそのまま使う — ワークフロー製品を置き換えないため、二重に持つ必要がありません
意思決定そのものを速くするものではありません。承認が降りたあとの工程を詰めるものです。
まとめ
ワークフローの種類は2つのレイヤーに分かれます。承認ルートの型と、システムの提供形態です。
承認ルートは直線型・条件分岐型・並列型・指名型の4つ。多くの申請は直線型で足り、金額基準が入ると条件分岐型になります。型を増やすほど運用は重くなるので、まず全申請を直線型で置き、例外が出たものだけ分岐させてください。
そして「ワークフロー」という語自体が、業務の手順そのもの、システムに組み込まれた承認機能、製品カテゴリの3つの意味で使われます。社内で話が噛み合わないときは、たいていここがずれています。
製品としての分類軸は2つあります。提供形態(クラウド・パッケージ・内蔵機能・内製)と、扱う申請書の範囲です。パッケージ型はオンプレミス型とほぼ同義で、買い切りのライセンスを自社サーバに置く形を指します。
隣接する製品とは目的で分かれます。BPMは業務の改善、ワークフローは申請と承認の処理です。経費と人事は専用製品のほうが法改正への追随が強いため、そこを外した構成が現実的になります。
そして自分がどれを探しているかは、解きたい問題から逆算するのが早道です。決められないなら手順の問題、処理が遅いならシステムの問題、承認後に進まないなら承認の先の問題です。
まずはいま社内で「ワークフロー」と呼ばれているものが3つのどれなのかを確認してください。製品を比較し始める前に、ここで認識をそろえておくと、要件が発散しません。
主な参照先
- ワークフローの承認ルートとは?重要性や基本のルートを解説|ワークフロー総研(エイトレッド)
- 承認フローとは?承認ルートとの違いや設計パターン4選|Gluegent
- ワークフローとはいったい何?種類から課題、システムまで一挙解説|ITトレンド
- ワークフローシステムとBPMツールの違いとは?|ITトレンド
- いまさら聞けない「ワークフロー」と「ビジネスプロセス管理」(BPM)の違い|TechTarget
- 経費精算システム・勤怠管理システム・BPMツールとワークフローシステムはどう違う?|コラボフロー
- パッケージ型ワークフローシステムおすすめ9選|PRONIアイミツ SaaS
- BPMとワークフロー(承認・決裁)システムの違い|BPMコンソーシアム
監修
伏見 匡矩
株式会社エイチ 代表取締役社長
株式会社エイチ代表取締役社長。出張手配・会場手配の実務を起点に、申請・承認から購買実行までを一体で扱う1Approvalを立ち上げ、事業責任者としてプロダクト設計に携わる。承認されたあとの購買・手配をどう自動化するかという観点から、Microsoft 365を基盤とした申請・承認の設計を扱っている。
経歴・運営者情報を見るこの記事のテーマ
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